セクサロイド

セクサロイド
セクサロイド
浴室に幽閉された
モノクロの私は
未完成でありながら
あなたに飼われるのを
待っている
誘うように哀願する
【色が…欲しい】
乾いた喉を裂いて
溢れ出したコトバ
堪え切れぬ涙を
身体中に浴び
まだ
独り
濡れたままで…

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小詩  四編    4

小詩四編   4
【すれ違い】
そろそろ来ると
思ったとおりの
すれ違い
【水溶性】
文字が滲むのは
涙のせいね
水性マジックで
君を呼べば
夜が溢れる
【鍛える】
あなたは鉄棒の逆上がりが
上手にできないからといって
手の皮が破れるほど
しがみついて
握りしめてはいけません
鉄棒は汗で錆びて
あなたは淋しくて
逆上がりしたくなるだけです
【逆鱗】
逆なでした冗談は
嘘ではないから
厄介だ
真実みたいに
輝く嘘は
皮肉に彩られ
鱗に尾鰭をつけらた龍は
ストレスを溜め込んで
いずれは
雷を落とすだろう

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騎乗体

騎乗体
馬が鬣を靡かせると
私の空白が埋まる
摩擦する風を受け止めながら
まだまだ走り出す
熱風に怯まず
身体ごと曝された
狂態が踊り出す
発火する魂は
新しい炎を生み出し
空白は燃やされ
女は叫びながら
刹那を駈ける

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し 音にだしたら黙り込む
四 数にして見りゃニで割れる
紙 インクが無くちゃ白いまま
死 白い布巾が顔を隠す
ともすれば
詩 長い一行の地平線

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言葉

言葉
愛する人よ
鏡を見ずに私の方へ振り向いてください
月光があなたの顔を照らすとき
私は最初で最後の言葉を伝えることができるでしょう
でも雲が残酷に月の灯りを消したなら
私は黙ってあなたに抱かれに行くでしょう
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じゃあね

じゃあね
捨ててしまいたい
あなたとお揃いのペアリング
忘れてしまいたい
私だけを映していた瞳
封じてしまいたい
色とりどりのラブレター
燃やしてしまいたい
あなたまみれの日々の私
送り届けたい
配達人が間違えて
隣のポストに入れた
手紙を
ひとことだけ
じゃあね
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闇の告白

闇の告白
くちづけという名の枷で狂わせて
滴る雫 溢れても離れず離さず
絡まった舌 噛み切れるように愛しても
尚余りある激愛の渦に
我 狂女となりて
狂人廓(くるびとくるわ)で
あなたを待てば
吐息は罪に
忘却は彼方に
千夜一夜の夢現は
闇への餞 極彩色に

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胸には花を

胸には花を
胸には花を
蒼白いか細い腕には
赤黒い注射の跡
車椅子のおじいさんは
動かなくなった足と歴史を語り
忙殺されるサラリーマンは
上司の嫌味に
絡まれ目がまわる
今日もどこかの産婦人科で
胎児がひとり
ゆっくり流れた
人の心には
いつも美しい花が咲いていると
信じたいから
涙で霞んでも
消えないコサージュを
あなたの胸に
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イチゴジャム

イチゴジャム
お父さんとお母さんの間に
イチゴジャム
拾いなさい
そして捨てなさい
粗末にしてはいけないだろう
お父さんとお母さんの間に
飛び散った
赤いジャム
わたしが棄てたのは
二人の間で
泣きたかった
イチゴジャム
瓶には戻らない
イチゴジャム
産地も定かでないジャムを
メーカーのない瓶に
瓶詰めにして
わたしの手が真っ赤になり
ベタベタと未練の
てのひらを差し伸べるように
わたしに始末される
赤いジャム
わたしはその瓶を
月も星も知らない夜
桜の木の下に埋めた
狂い咲きの桜は
薄紅色に最期を彩り
散っていく
ほんの少し
イチゴジャムの
薫りを残して

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螺子

螺子
寝ている時間が長くなった
父の螺子が緩んで
肝臓から穏やかに血は流れ
肝機能は停止状態
寝ている時間が長くなった
母の螺子が錆びて
筋肉の凝縮にから激痛
ペースメーカーの心音は
時折 静止
寝ている時間が長くなった
私の螺子が横に倒れて
私の首
薬物漬けの注射器の穴
いつしか沈黙
独りがため息を吐き出し
独りが饒舌に罵り
独りが上手に雲隠れする
まだ生きていたいというわけでなく
まだ死にたくないだけです
人が死にたがるのは上手に生きられないのではなく
自由に生きられないからです
あぁ 誰か螺子を元に戻してくれませんか
緩んで 泣いた顔になる父の
錆びて 動けなくなる母の手の
傾いて 口から食べ物をこぼす私の
螺子を正しい方向へ強く強く回して下さい
朝 目覚めたなら朝日に向かって
おはようございます
と 弾む声で
家族が笑顔で動けるような
回り続ける螺子を
三本だけで宜しいですから

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