きみの音

きみの音

きみはぼくの歌であり
詩であった
きみはぼくの透き通る風
静かな湖水
きみがシーラカンスだったころ
ぼくはアンモナイトだった
君が活火山で怒っていたとき
ぼくは冴えない紙切れだった
きみがぼくと歩んだ道は平行線
一番近くできみをみて
一番遠くに感じてた
きみ
もういいよ
きみが地球の裏側で
クリスマスを迎える頃
ぼくはたぶん砂糖黍を
植えている
植えているんだ
飢えているんだ
餓えていたんだ
パキリと折れた砂糖黍
きみにあげるハートのチョコが
ぼくのために割れた音
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アディクト

アディクト
麻痺した詩文
解読不明の怪文書
死海に沈んだ遺跡
白い部屋には
彷徨える頭脳
細胞分裂を繰り返しては
前途多難の前頭葉
一途な道に
立ち入り禁止の立て看板
ストーカーが
グルグル廻る
終夜(よもすがら)
もしかしたら
君にアディクト

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蝶へ

蝶へ
悲壮とは 悲愴か蝶よ晩秋を 越えれぬ羽で私のもとへ
駕籠からは 逃れぬ宿世 嘆くなら 僕の名を呼べ 月夜の空に
羽ばたきを封じた犯人 私なら その鳥籠ごと 壊してやるから
褪せた名に 色彩添えた 貴女の名 花の名を持つ それこそが罪
届かない それくらいじゃ届かない 私を呼んだら いつだって…
さよならと 愛してるを綴る指 強く結べよ 私はここだ
どうせなら ごめんなさいより もう一度 聞きたい言葉 【愛しています】
自惚れて いてくださいね 酔うくらい 溺れているのは 昔から僕
罪咎を くぐり抜けてやってこい 包んであげる 壊れぬよう 壊さぬよう
儚さや 悲しみ憂い 脱皮して 貴女は眩しい 言葉を散らす
恋人よ 蝶に美化され 泣くならば 私は貴女を照らす 月でありたい
暗闇に 蜻蛉のように舞う蝶よ 貴女の哀しみは 僕の牢獄

(私信短歌)

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絆(乱太郎・月夜見)


絆(乱太郎・月夜見)
悲しみを
癒やしに変えて
言の葉を
紡ぐ指で
私に触れて
月夜見
触れたいと
言葉重ねて
愛撫する
迷い込んで
二人の森に
乱太郎
ダンジョンで
探してください
紅い花
あなたのものに
なった印を
月夜見
薔薇の精
肌朱く染め
永久(とわ)の舞
重ねた指は
渦巻く契り
乱太郎
悠久に
詩を描きましょう
君の手に
添えれるならば
私のてのひら
月夜見
てのひらに
わからないまま
文字ひとつ
でもあなたなら
むねでかんじた
乱太郎
抱いてみて
私の全て
捧げても
惜しくはないの
君をください
月夜見
あなたへと
僕の捧げる
ラブレター
恥じらいさえも
封じた切手
乱太郎
プライドも
あなたの前で
通じない
言葉塞がれ
身体が開く
月夜見
信じ合い
罵りあった
夜明け前
忘れられない
二つの孤独
乱太郎
闇に舞う
孤独二つを
捕まえて
放ってみれば
絆という蝶
月夜見
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眼光

眼光
あなたは言葉を探す
本棚の深い森に
真昼を横切る猫の瞳に
君は主張を述べる
褪せた選挙ポスターに
迷い犬の張り紙に
人々は見つめ続ける
車に敷かれた猫の白目
保健所に運ばれる野良犬の陰り
私たちは詩を綴る
滲んだ万年筆のインクから
本当に伝えたいのは
青い涙
眼のスクリーンに焼き付けられた
日常化する赤と黒を
鋭利な刃で記録する
行間の隙間に想いを折り込み
文字に祈りを託してみても
ペン先から滲んだ染みが
じわじわ波紋を投げかける
それぞれに与えられた質問用紙
青いインクは「空」を描く
胸にインクを滲ませて
私たちは寂しく停電するだろう
それでも遺さずにはいられない
記憶の森に沈まない太陽
夕映えをに轟く雷鳴
稲妻のような瞬き
全ては
見開いたままで

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晩夏をゆく(小詩 四編)

晩夏をゆく  (小詩 四編)
【晩夏】
線香花火は湿って
微熱は褪せてゆく
なのに
鼓膜から
蝉時雨が
鳴きやまない夜
【立秋】
まだこない手紙を
待つような
忘れた人から
ひょこり
電話がくるような
女の第六感が
少しずつ
紅葉するような
【彼岸過ぎ】
あの人たちは
ちゃんと
往けただろうか
燃えるような
彼岸花の合間を
【故郷】
ここ以外
どこにふるさとが
あるのだろう
桐の箱には
干からびた
私のへその緒

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妄想不夜城

妄想不夜城
花が咲くのは昼などと
決めてしまったのは誰ですか
月下美人は夜に咲く
恍惚を匂わせて
激情に小さく悲鳴をあげた
私の城は月の城
深夜に浮かぶ月光花
欠けたり満ちたり消えたりの
たどり着けない蜃気楼
花は静寂に覚醒し
不眠の芳香を放ちつつ
瞼をあけたまま夢を見る
今宵限り花は狂人(くるびと)
紗をもがれるように
薄い粘膜に誰かが痕をつていく
零れた夜露に花が泣く
次から次々花は咲く
私は城から出られない
城が花に埋もれて
狂人廓(くるびとくるわ)になりました
花が咲くのは昼などと
決めてしまったのは誰ですか
月下美人は眠らない
夜に抱かれた春の性
誰も知らない秘密の花弁
一夜限りで散らしましょう
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散華の夏

散華の夏
散華の夏
零れた白い夏が
月に還る
晩夏の名を呼びながら
新たな季節に
淫らに燃えて
白肌は紗の薫りを
遺して
西国浄土の夢を
珠にして
夜を数える
泥濘から残されたのは
夏の名残りの
裸の芯
蓮(はちす)
十六方位に
光を宿していながらも
花弁は
珠玉の涙を浮かべた
薄幸の女
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煙草

煙草
沈黙ケースのホテルから
四角四面な私を取り出すと
いとも軽く持ち上げて
唾液のベッドに放り込む
真っ白な私に真っ赤な言葉で火を付けて
頑なな私の芯を解ようにくちづける
あなたが私の躰を吸う度に
痣になった蛍火が
儚い命を闇に溶かして消えて逝く
ギリギリまで私を奪うくちづけは激しく
火照る私の体温は発火し高熱を帯び
病に犯され寿命を削り取る
あなたの憎らしい執拗な戯れに
私はヤニついた毒を吐く
けれど
容赦なく私を一本一本と
征服してゆくあなたの指先が
私を狂わせ胸の炎を踊らせ
私を蝕んで愉しんでいる
あなたの咽せた咳 ひとつ
これが私の精一杯の抗い
蒸気した私の涙が紫煙となって
くゆり くゆり と立ち上る頃
あなたに愛された記憶は
夜にはぐれて薄れてゆく
思い出を全て空にして
私を簡単に捨てるあなたに
報いを授けましょう
あなたの肺は真っ黒い点描画
誰も入る隙間もない
私だけの部屋になる
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言の葉を並べて祈る最愛の人は消えゆく音楽にも似て
とめどなく 溢れる想いメロディーに歌えど歌えど君には届かず
夏の日に 飛んだ蛍の灯火に 君はみたかい あの灯(ひ)に愛を
来世では 添い遂げようの 約束も 来世があってならの約束
人知れず 君の名を書く 君を呼ぶ 姿形も白紙のノート
また会おう またっていつなの どこでなの 黄泉路は私独りで逝くわ
最近の私は悲劇で喜劇なの 自分の余命玉響の音
詩はかかない 詩は書けないの だから今 死を書いてるの 死を書いてるの
招き猫 招いてください あの夜を ブルーノッテの薫るあの女(ひと)
さよならと言ったあなたの始発駅はじめましてが冷たい終着
真夜中にあなたをさらった 犯人は 哀しく泣いたカムパネルラ
嘘を塗り 罪を纏い 泥濘に 足掻きながらも 僕には君だけ
世界から弾かれたのは鎮魂歌 モーツァルトは いまだ眠らず

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