晩夏をゆく(小詩 四編)

晩夏をゆく  (小詩 四編)
【晩夏】
線香花火は湿って
微熱は褪せてゆく
なのに
鼓膜から
蝉時雨が
鳴きやまない夜
【立秋】
まだこない手紙を
待つような
忘れた人から
ひょこり
電話がくるような
女の第六感が
少しずつ
紅葉するような
【彼岸過ぎ】
あの人たちは
ちゃんと
往けただろうか
燃えるような
彼岸花の合間を
【故郷】
ここ以外
どこにふるさとが
あるのだろう
桐の箱には
干からびた
私のへその緒

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