妄想不夜城

妄想不夜城
花が咲くのは昼などと
決めてしまったのは誰ですか
月下美人は夜に咲く
恍惚を匂わせて
激情に小さく悲鳴をあげた
私の城は月の城
深夜に浮かぶ月光花
欠けたり満ちたり消えたりの
たどり着けない蜃気楼
花は静寂に覚醒し
不眠の芳香を放ちつつ
瞼をあけたまま夢を見る
今宵限り花は狂人(くるびと)
紗をもがれるように
薄い粘膜に誰かが痕をつていく
零れた夜露に花が泣く
次から次々花は咲く
私は城から出られない
城が花に埋もれて
狂人廓(くるびとくるわ)になりました
花が咲くのは昼などと
決めてしまったのは誰ですか
月下美人は眠らない
夜に抱かれた春の性
誰も知らない秘密の花弁
一夜限りで散らしましょう
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

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