エデンの園

エデンの園
右手にローションと媚薬
左手にベトベトの携帯電話
じんじんする
私の空洞を埋め尽くす
あなたからの電波
我慢できないエクスタシー
焦らす駆け引きを
鳴きながら 呻きながら
空へと放射する
燃えるよだかの君
携帯からさらけ出される痴情(地上)の波
分子量から核融合される遺伝物質
垂れ流した愛に
降られた酸性雨
隠していた小型船が
宇宙に溶けながら
漕ぎ出してゆく
肥大を続ける二つ星
月が赤く欠けてゆく空
蕾が静かに花開く夜
右手に携帯 左手にあなた
二つを天秤座で計れば
同じ比重
それを知っているのは
遠い夜空に消えた
カムパネルラだけ

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蛇を呑むその毒素でまた蛇を殺し合いは果てなき蜜月
毒を知る毒の味だけ信じてるそんな乾いたガラガラの蛇
はむ術を成す術ばかり教えられ恋しあなたを絞め殺したい
大蛇なら呑み込まれたい私ごと溶かしてやりたいあなたの腸
雌雄さえ区別がないなら私こそ大蛇になってあなたを食らう
絡まった隙間もないほどピッタリと擦れあう音解けぬ痴情
極楽があると言うならば蓮は無く血の池からは紅の薔薇
毒食らう蛇に熟れた私なら喉は乾いて身体は濡れて
虚言でも身体ではなく魂が震えるような言葉の愛撫
罪人が贖いがてらに恋ひとつ呑み込んだのは言葉言葉
卑しめて辱めて串刺しにされた夜から血が止まらない

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惑星「メバチコ」

惑星「メバチコ」
突然の痛みが
第三惑星に感染し
海が濁りだすと
真昼の光が奪われ
隣の双子星の
金星からも
硫酸の雨が
降り続ける
透明な粘膜が
セロテープみたいに
オゾン層に張り付いたまま
星星は
盲目の夜を
迎えに逝く
公転していた中核の行方は
膨張し圧縮された
ブラックホールの
餌食となり
乾いた土地は砂塵に帰して
もう
花々を見ることも
叶わないだろう
大切な核心は
こうして
滅んで逝く
それが
眼(まなこ)であろうと
地球(ほし)であろうと
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殺到

殺到
朝日が昇る前におはよう
トーストにはイチゴジャム
フライパンにはチャハーン
父の胃袋には大量の薬
母の頭には被害妄想
洗髪には水と髪
背中には塗り薬
洗い場にはスポンジとチャーミーグリーン
仕事のあとには疲れた
暑さに目が回る扇風機
刈り込み先では蜂の巣退治
畑には害虫駆除の液体作り
苗植えの為に体力消耗
足腰の痛みにコンドロイチン
疲れたの次に溜め息
エプロンの汚れ
洗濯機は節水の為積載量オーバー
お天気は不機嫌
気候は気まぐれ
ラジオは垂れ流し
夕日が沈むまでに郵便屋
いただきますのあとの御馳走様
空っぽの炊飯器
豆電球はだいたい、だいだい色
おやすみなさい
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短歌        5首

短歌       5首
悲しみを胸に秘めたわびづまい一人より二人涙より酒
安穏と皆に恵まれ文字を書く絶望が足りぬ孤独が足りぬ
高くより深くありたいという君の意味に刺された昨日の嵐
憎しみに曇る空に蓮の花開いた言葉は虚構に満ちて
陰影と策謀きたす秋の靄渦巻く中に人の顔顔
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孤独へのステップ

孤独へのステップ
           1 
大吉の御神籤を引いた。その裏側で、死に神が笑う。
そういえば、血が止まらない日が、千年続いた。
孤独はそんな裂け目から、始まってゆく。
           2 
孤独の境目を繕う針と糸を、探している。
糸は針について行くと決めているのに、
針を動かしていたのは、壊れたミシンだった。
針は折れて、糸は鮮血に染まり ぷつり と、切れて
詩合わせができない。
           3 
形の無い愛に言葉やセリフをつけて、舞台で踊らされる。
プリマドンナが、立っていると見えていたが、皆には、
舌を出して笑ったピエロが、主人公だと分かっていた。
愛は見えない形で、嘘をつく。
           4  
虚構から護られたシナリオの上で、息継ぎができない。
張り巡らされた有刺鉄線がくい込んでゆく。
もがけば、もがくほど、ぼとり、ぼとり、と落ちる肉片に、
舞台は拍手の渦で、幕を閉じる。
時代が求めているのは、いつも惨劇だ。
           5
私の胸の中を、無数の蟻たちが、出たり入ったりして、
左心室の肉壁を囓り始めた。
ポッカリ と、開いた穴から秋が顔を出す。
いや、空きが吹き抜けてゆく。

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西日に問われて

西日に問われて
君は最近誰かの為に
泣いたことがあるか?
いいえ
可愛いのは自分
可哀想な自分
苦しいのも自分
君は人の話を
最後まできけるか?
いいえ
正しいのは自分
話を切る自分
そして縁を切るのも自分
君!
誰も寂しいのだよ
君はなんて
身勝手な
愛情乞食なんだろうね
でも…
でも
この街で
あなたが育った
泣いて生きた
この街に来て
やっと
私も本気で泣けたんです
理由はわからないし
共通点なんて
それだけですが
愛に近いと
想いませんか
真っ赤な夕焼け空
西日の当たる廃屋で
シャッターを切る
あなたの悲しみを
私は今日の
カメラに焼き増しする
ホテルで目から
西日が零れて
孤独が優しさになって
面影が枕を濡らした
遠くで
電車の音が聞こえる
あぁ
お父さん
この街にもいたんですね
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沈まぬ夕日

沈まぬ夕日
沈まぬ夕日
燃えるような
夏の黄昏の向こう側の
グラデーションに
死んで逝く
ぼくらの夏
愛しき人よ
あなたと一緒に見た
あの夏の花火が
今 空に灼かれているよ
「もう
あなたに
会うことはないわ」
夕暮れに
俯いた
あなたの顔
あなたの声
ぼくの西日は
沈まないまま
記憶を焦がして
夜になれない…

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無題

無題
【無題】
淫猥な/記号の羅列/エッフェル塔に/ぶら下がってる/文字をかき集めて/明日/路地裏で死ぬ/猫の目に/光を宿すのが/詩人の仕事である/無鉄砲な/ドン・キホーテを/笑う/資格がないのは/皆が/彼に/憧れるからだ/よく聞け/よい子の/ロクデナシ共よ/夢から覚めないまま夢を見ながら/明日は/語れまい/
【素描】
素描/あなたの輪郭を/産湯で溶かす/夢をみる/裸のママ/泣いている/二人の子ども/独りは/よい子の息切れ/で発狂/裸のママから/殺された/もう独りの私/いつもの/日曜日/昼間の/素描/
【悲鳴】
平凡な/戯れ言メールに/滅多差しにされた/午後の私の/処女膜の裂け目から/溢れ出る/憎悪を/飼い慣らす手段を/覚えるために/アイスピックで/コチコチと/氷を/潰す/崩れ落ちる山の/悲鳴を聞きたい/
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(妊娠は女が犯した最大の過ちであり
     その股から黙った子が悲鳴を上げるだろう・・)
そこは遠い星の国だった
夜になるとピンクのミニスカートを履いた宇宙人がいて
火星でヒラヒラと手招きして
地球飛行士の重い鎧を手慣れた技で脱がしてゆくのだ
銀色の鉛玉だけになった宇宙飛行士を挟み込むと
宇宙人は鉛玉を逆手にとってしなやかに絡みつき
やがて、ピン!と脚を張ると
飛行士たちは死んでゆくのだ
 という 魔法使いの言葉を信じたのは満月の夜だった
私は自分の中にある新月に手を伸ばし 初めて空に指を入れた
その星の国で出会った人を想像しながら 目を閉じてゆく
地球の大草原に放牧されたい囲われた馬の涙と
甘いお菓子を訪ねて歩く秘密の霊感少女と
廃屋の死骸ににシャッターを切るトーンの外れたジャズシンガー
饒舌の悪魔と契約を交わし
呪われた美に洗脳された王子の歌声を聞く
私はそのひとりひとりに種をもらった
花は一夜で狂い咲き ぬるま湯に浸かっていた
花びらは、朝に夕焼けのように燃えて広がり白い布を
灼いた痕だった
ショーツからはみ出した四つの滴そのままに
ホテルに鍵をかける
西日が血痕をいっそう焦がす頃 私の夏は過ぎようとしていた
私は産み直したのだ
あの日 私を犯した父 その人を
意味もなく 置き去りにしたくて

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