孤独へのステップ

孤独へのステップ
           1 
大吉の御神籤を引いた。その裏側で、死に神が笑う。
そういえば、血が止まらない日が、千年続いた。
孤独はそんな裂け目から、始まってゆく。
           2 
孤独の境目を繕う針と糸を、探している。
糸は針について行くと決めているのに、
針を動かしていたのは、壊れたミシンだった。
針は折れて、糸は鮮血に染まり ぷつり と、切れて
詩合わせができない。
           3 
形の無い愛に言葉やセリフをつけて、舞台で踊らされる。
プリマドンナが、立っていると見えていたが、皆には、
舌を出して笑ったピエロが、主人公だと分かっていた。
愛は見えない形で、嘘をつく。
           4  
虚構から護られたシナリオの上で、息継ぎができない。
張り巡らされた有刺鉄線がくい込んでゆく。
もがけば、もがくほど、ぼとり、ぼとり、と落ちる肉片に、
舞台は拍手の渦で、幕を閉じる。
時代が求めているのは、いつも惨劇だ。
           5
私の胸の中を、無数の蟻たちが、出たり入ったりして、
左心室の肉壁を囓り始めた。
ポッカリ と、開いた穴から秋が顔を出す。
いや、空きが吹き抜けてゆく。

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