所有者

所有者
財宝の煌めきは永遠
あなたのそのうわずった
欲情の声の破片
白い箱の中が
あなたで満たされた
乳首を噛んで
ナイフの切れ味を試したい私
あなたが溢れると
わたしは濡れる
あなたが狂うと
わたしは悦ぶ
暴きたい 暴かれたい
私の全身全霊を捧げるから
あなたを覚えさせて
違う二人に混ざり合ったなら
その煌めきが遠ざからぬよう
匂わせて
囁く声
意識の混濁
溢れる蜜と苦い水
こわれる時間
壊される精神
さぁ
手をついて
焼き印を捺されるのよ
これが所有者の証
私はあなたを戻せない
あなたは私を戻せない
永遠に煌めく宝物
誰にも渡さないわ
今更そんな声で
誘わなくても
私が 所有者よ
安心して眠りなさい

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鏡と恋

鏡と恋
言の葉の呪縛に恋は悲鳴あげ鏡は散華の血の跡を笑う
はだけたる浴衣纏える君の胸花弁の聖痕消ゆることなし
鏡割りアリスに会いたい悲願なの白き兎は今日の生け贄
海底を指でなぞれば石榴味君の傷口毎夜疼けり
鏡の間虚構の先の真実を我に教えよ叫ぶも欺瞞

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首輪

首輪
貴女の乳白色の肌が
白い陶磁器になる古城
鼓動を奪われ
口唇からは渇いた声
覚えたてのおねだりのポーズをとりながら
熟れすぎてたぎった舌を差し出した時
私は微笑しながら赤ワインをその胸に滴らせた
愛玩物の哀願の表情で
錆びた教会の十字架に背を向けたまま
私たちは祭壇で獰猛に交尾し
所有の刻印を
身体中に散りばめた
月が七度巡っても
飽きることなく
お互いに貪り続けて、廃墟の風景に鮮色をおとした
嘲笑いながらキリストの血を飲んだのは
余りにその食感が
貴女の性器に似ていたからだ
人間に生まれ感情を憎む貴女よ
ならば、ここで再生し私の鳥籠の中でだけ啼けばいい
囚われ人の優越と
夜の悦楽を捧げよう
まずは貴女に似合う
黒皮の重い首輪を裸体に纏いたまえ
染み込む汗と涙と唾液が愛証の印
首輪は
貴女の自我を締め上げ貴女は美しく覚醒する
気が狂うほどの法悦とともに
いづれは四肢全てを拘束し
私だけのビスクドールに作り替えてあげるから
今は素直に 言えばいい
誓いの首輪の世界に飢えていると
光の眩しさなど もういらないと

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嫉妬の花語り

嫉妬の花語り
黄色い薔薇は
饒舌で
黄色い薔薇は
コトノハ使い
黄色い薔薇の言霊は
塞いだ耳にも木霊する
黄色い薔薇を
贈りたくて
僕は樹海に入り込む
黄色い薔薇の棘にうなされ
未来はいつも試される
黄色い薔薇が
魅力的で
僕はぼくの花を喪う
黄色い薔薇が
眩しくて
羨む僕の背伸びを
笑う
黄色い薔薇は
今日も咲く
何食わぬ顔して
明日も咲く
黄色い薔薇は
枯れない造花
僕は生気を亡くした
切り花
黄色い薔薇は
僕の真ん中を
嘲笑う
未来永劫
嘲笑う

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野良犬2

野良犬2
踵の取れたパンプスで
町を闊歩することには
慣れていた
生き抜くために必要なのは
きつめの香水(プワゾン)と
残飯めいた男漁り
そして心に降る長雨の
憎らしさ
夢見がちな彼氏のことなど
もう忘れた
おとぎ話に飽きたから
破瓜の痛みを彼の部屋に置き去りにしたまま
初花はちっぽけに散った
いつもその傷口が疼くのは
そこから
社会に唾を吐きたいからだ
永遠の無敵のチュウができる人
どこにいるんですか
私は神様のような人を
探して
探して
命がけで探し続けていたので
さまよいの果てに甘い砂糖菓子
笑顔ひとつでくれたあなた
浸透していく温もり
あなたの声で
神様に抱かれたから
幸せな野良犬に墓などいらない

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悲哀

悲哀
君の哀 詠う帰燕や 嘘一つ

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文字呪縛

文字呪縛
傍らで眠り惑える霞み目に悩める君の愛しき横顔
机固く筆重く嘘偽りの呪縛にかかり
口角をあげて笑える女狐に夢にうなされ未来は見えず
音もなく言葉少なくうつむきてあなたは紙の上の旅人
囚われの王子さまは文字の中愛の呪文は未だ聞こえず
「ジャン・コクトー」名言の「嘘」につきセックスしあう二つの論は

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生きたい

生きたい
昨日笑っていた子供が
今日は死んでいる
インドの端
親に売り飛ばされたのに
なぜ親を憎まないのか
と 尋ねると
産んでくれたから
と 喜ぶベトナムの少女奴隷
一炊の飯があれば
明日百人生き延びれた
カンボジアの涙
私は 捨てる
今日の味噌汁
たくさんの白米
きらいな父親
為平 澪!
それでも
死にたいとぬかしてみろ!

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異端者

異端者
あなたは
ユダになりたがる
イエスと言えずの偏愛を
秘めた薄暗い情熱を
皮袋に偲ばせて
肉体と言葉を賭けて
売りたがる
あなたは
ユダになりたがる
腐ったパンでもいいから
無理矢理口の中に突っ込まれると
それを泣きながら うれしがる
渇望する渇愛の渦を
さまよう放浪者よ
道行きもままならぬのに
どこへ愛憎の哀しみを吐き出すのだ
十字架を背負うは
異端のあなた
裏切者は愛の二つ銘
その重き楔
付きまとう聖痕の形
同じ贖罪の証を
わたしの身体にも手のひらにも
覚えさせてくれ
夜は始まったばかり
さぁ
二千年分
偽りの恋をしよう

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野良犬

野良犬
片手間に
愛みたいな てのひらを差し伸べたり
恋と錯覚させることばを囁いてみたり
生きるすべを教えたりすることを
すべて
やさしさだと受け止めてしまう
勘違いという餌は
餓えた私の五臓六腑に沁み渡り
その甘さをいつまで忘れられない
もう頭を撫でないでください
私は性質(タチ)の悪い野良犬
中途半端な野良犬
土下座したいほど愛が欲しいと吠えつづけた野良犬でした

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