雨漏りと青空

雨漏りと青空
しとり しとりと
落ちてくるのは
誰の哀しさ
夕立の激しさを
期待した子は調子狂い
洗濯物が乾かないわと
奥さまは超不機嫌
それでも
静まってゆく雨粒が
バケツいっぱいになる頃
筒抜けた青空の形は
焼きたてのメロンパン
のような
ホカホカの優しさを
私に見せた
男と青空に大切なのは
どうも
「優しさ」
らしい

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「私が花と認めるのは桜だけなの」
そう嬉しそうに語る貴女
「花雲 上弦のの月
    人形と為れる私と遊んでよ貴方」
と桜に酔いしれる貴女
「貴方に愛されているから私は自分を愛しく想えるの・・・」
と 真っ直ぐな瞳を向ける貴女
------そんな貴女を僕は裏切り御都合主義の神の手を取り
   貴女を捨てた
貴女は泣きなら僕に
「思い出をありがとう」
と言って微笑んだので
一生僕の中で
美しいまま咲き続けるのだろう
僕は春の雨の中
泣き叫び
貴女の化身である満開の桜の木の下で
罪の重さに跪き
貴女を求めて慟哭し
動けなくなってしまった
願わくは満開の桜よ
その根で
僕の血脈を吸い上げ骨を砕き
僕の血をその花弁のごとく
儚く散らしておくれ
雨に濡れたその一片が
あの人の薄紅色の唇に
触れるまでに・・・

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サクヤコノハナ・ トワニ

サクヤコノハナ・トワニ
割く闇 桜
傀儡が 紅
夜想に 闇
焦がれ 恋
残した 望
羽音を 波
凪えぎ 泪
灯す悲 友
環に枷 吾
匂う華 庭

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溺愛

溺愛
おんぼろな音がするバイクで
ぼろぼろでボローニャに行こう
レコーダー連日終夜止まらせず
天気予報はてんであたらずじまい
留守番人はルームでおくつろぎらしい
老い
惚れ
連夜
点描の
ルミネを描く

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 KISS WILL KILL ME 

KISS WILL KILL ME
苦しくて空気を乞う
血が滲み地に落ちる
連れてて疲れ果てるまで
獣が啼く今朝の夢
出てて君でなきゃ私
遊んでる貴女に悪戯を
夜想深く約束破りそう
目指すの名誉のない国へ
天使の翼天使の羽ばたき
これはね恋の為せる業
牢屋で寝ろと主は乱れ
紫陽花と紫陽花の微熱に
手には刃掌には孤独

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心象風景/欠けた器

心象風景/欠けた器
みんながみんな口を揃えて
いうのです
「死ねよ」
と。
母親は哭きながら
お前は私の背負う十字架だといい
父親は金をくすねて出ていきます
弟は無関心なまま明日の仕事の見積書と新妻の機嫌とりに夢中で
私のアイデンティティーは
錆びれた空の彼方の人から
無に還れと欠けた器を
投げつけてきました
ひび割れたお椀の中から
私の薄っぺらなイデオロギーが滴り落ちて
砂塵に回帰せよと
形あるものたちが叫びながら笑っています
お椀の中から立ち上る悪臭は私の精神で
夢の島にたどり着くまでに
一目
自分の顔を
薄汚れたお椀にに盛り付ければ
あとは要済みです
あなた方の信仰する神は
沙羅双樹の枝で編み上げた中に
慈愛を注ぎ込み高みへ導くでしょうが
スクラップになる私の赤茶けた役立たずの欠けた偏屈さには
ゴミ処理場が
私の極楽浄土だと指し示し
くすんだ空の海原を映した
器が 私の内でも
空の彼方の人と同じ声で
繰り返し 繰り返し  
波紋を投げかけます
「死ねよ」
と。

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近寄りすぎると
重くなる
離れすぎると
消えてゆく
一滴の雫
詩と死の間に
流した涙が
騙し絵のコップに
泣いた顔と
笑った顔の
中間値で
現れるオアシスを
一体誰が責められようか
より多くの毒杯に
酔った者が
背負う儚い輝きたちを

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情け知らず

情け知らず
発ち急ぐ想いに身を委ね
荒波に浚われるまま
自己処罰繰り返しても
我 独活(ひとり)
人の情けに刃を向け
抱かれても 独り
愛情遍歴を繰り返す度に
束の間の癒しを求め
時は無残に親しき人の命
刻々と奪う
情けなき我を
罵倒する声 届かず

過ち繰返し「女」に
なりし日に訃報来しこと
覚悟の上
泣かれても 泣いてみても
歩む
暮れゆくネオン街
夕暮れの薫風冷えて肌恋し
郭公の狡さに格好の悪さ
我独り
ホテルの引き出しに
恥を終まえり
蜜指で走り書きしたメモを残して
「情け知らず 世間知らず」
と 文字は惨めに滲めり

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黙殺

黙殺
飲み込んだ電車が
身構える集団の
溜め息を芯から奪う
今日も満室部屋で
円滑に回るシステムに
妥協と愛想笑いが
個別に煙りを立ち上げて
ウイルスが口から流れだし
余儀無く迎合する群れ
消毒液の夢
騒音はシャットアウト
兵士は構えた銃の記憶を
クリアーにリセットして
泥のように眠れ
手垢だらけの
朝刊がくるまでは

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あまたの人へ

あまたの人へ
阿僧祇の次の位の数多の星よ
輝き続けよ
薄汚れた街に染まることなく
人工電灯に媚びることなく
数多の未知数を未来に抱えて
歩めよ
叫べよ
吠えて噛みつけ
幾つもの愛想笑い
幾つものシフトカード
幾つもの安い給料明細書
大人の近道も必要事項
覚えておいて損は無し
世渡り上手に街を泳ぐも
されど
お前は透明な天球議
都会では計り知れない
尺度と高さと潔さ
心して旅にでよ
人の手垢の届かぬその名に相応しく
阿僧祇から一条の光射すがまま
その上の高みを進みゆけ
そしてお前は知るだろう
お前の名に
お前の未来に
未知数の夢が
終わらない詩が
春嵐の情熱が
用意されていることを

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