くゆり煙草

くゆり煙草
くゆり煙草
あなたの指先が
私を知ってから
煙草の煙りのように
濃く 薄く
私は踊り吐き出される
身体があなたを知らなければ
早く灰皿で
ちびてくたびれる
私を消していって欲しかった
煙草はくゆる
私は貴方の匂いが染みついた
古びたシャツ
いつまでも
いつまでも
くゆり
くゆり

貴方の薫りと指に
挟まれて
踊らされながら
炎は独り涙で消えていった

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紅い旋律

紅い旋律
カルメンの カスタネットの 激しさに 狂乱乱舞男はタップ
君が抱く 君が掴む 君呻く 私はベッドで孤独なダンサー
灰皿に 置きっぱなしの 煙草には 呪いのような孤独が踊る
こじ開けた唇歪に音をたて もつれたままの音は二短調
赤い靴 踊り出すのは足でなく もっと上手に 脈打つ子宮
奏でてよ 爪紅染まる旋律で 動けなくして戦慄メロディー
紅に染まった空の世紀末 君はみたかい赤い靴の子
鮮やかに 真冬に向日葵咲くように 鼓動はショパン 革命的に

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薔薇の憂鬱と極彩の哀しみ

薔薇の憂鬱と極彩の哀しみ
悲しくて楽しい歌は詠えません地球に独り残された夜
二人裂く 嵐の夜の苛立ちが 瞳(め)から溢れる小さな海辺 
極彩色のアトリエに 今 君在らず 我の内にて閉ざされしまま 
枯れた薔薇 二本差し出す君の手が 描く文字は 居たい 会いたい 
誰一人出会わなければ深海で盲しいた眠れる魚になれた
強気な目 緑のドレスに紅き口 幽閉の画家 タマラ・ド・レンピッカ
別れ際 過去の栄光一編に描きたかったあなたの肖像
紅をさし 黄色い薔薇を 手折る時 花言葉憎くく 唇噛みて
 
朝露に 濡れた赤薔薇 引きちぎる 指に血の痕 嵐の夜明け
 
アイリスの芯の熱にて受粉した 絡めて薫る 濡れた指先

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青い鳥

青い鳥
青い鳥
夕闇から一条の想いが
青空にチョークで
夢の在処を配達する
昔 アスファルトに落書きした
まる
さんかく
しかく
には
足形と無邪気なままの笑い声
置いてけぼりの故郷は
空の蒼さに溶け込んだまま
鉄線が張り巡らされて
帰らず終いになってしまった
ちいさな私の青い鳥

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文字呪縛

文字呪縛
霞目に悩める君が傍らで眠りに入れる愛しき横顔
嘘偽りの呪縛にかかるペン先の恋なら標本の中
口角をあげて笑える女狐の夢にうなされ未来は見えず
音もなく言葉少なくうつむきてあなたは紙の上の旅人
囚われの王子に未だ聞こえざり 文字の中なる愛の呪文は
ジャン・コクトーの「偽」に関わり絡み合う下肢の二つの論ひそやかに

(改稿版)

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嘘で騙して黙らせて

嘘で騙して黙らせて
男性の聖人君主は一握りあとは腐れ外道かど阿呆か
男には騙されるなと母は言う経験者の苦労は黒くて
人はみな 自ずと愛を携えて掴んだままで腐らすキャッチー
優しいの裏側にある下心 三叉路 指さす標識のままに
ここは明日 詩人の墓になるらしい 中絶児の泣くサイト好評
悲しくて楽しい歌は詠えません地球に独り残された夜
大人には大人の事情があるんですお金で計算 愛の精算
何かいる だから叫ぶの怖いから猫の目みたいな黒い企み
今わたし 虚構を指で数えてる ペットボトルの水を濁らせ

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淨円月

淨円月
淨円月
踊り疲れた御霊たち
各々の宴を語り合い
清き月に照らされて
魂の行方に酔う
月 白く
鼓動 鋭く
枝 黒く
来世浄化の
メッセージは
柔らかな光降り注ぎ
あなた方の元に
安息の月日を
召還し
忘却の岸辺へ
記憶運ぶだろう
鎮魂を謳う青い闇
空には炎の
真白き円月

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錯乱

錯乱
錯乱

あなたを
幸せの象徴
のように思ってた
私の
真ん中に幸福な未来
私の
真ん中に満ち足りた世界
あなたの真ん中に
砂上の楼閣
あなたの真ん中に
赤いドライフラワー
描けない夢
届かない声
穏やかな虚構
二人を隔てる透明な膜
触れ合う事さえ
赦されない
かつての日常
二人の真ん中に
飾られた
空白の錯乱

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楽しく笑え

楽しく笑え
テレビが
とある撮影現場を放映していた
ベルニーニの彫刻から
抜け出してきたような美男子が
鍛錬された筋肉を魅せつけては
ビキニ姿の女性千人くらいに
キラキラ声を上げさせていた
颯爽と水上バイクに跨り
晴れ渡った表情を味方につけて登場した
男の太陽のように眩しい笑顔は
青い風を誘い込み
女の白い身体のラインから
甘い香が立ち上る
撃ちすさぶ波飛沫に堪えながら
トロピカルな成熟さを狙うカメラマンは
命綱で身体を斜めにして
頭を打ち付けて撮影する
裏方の青ざめた表情たち
レポーターの饒舌で快活な声は
歯を食いしばりながら
腕を上げたまま鬱血している
アシスタントディレクターの筋肉に食い込んで
既に現場の犠牲となっていた
――あぁ、一度でいいから、あんなことして脚光を浴びて楽しく笑ってみたいわぁ――
父はたいそうご機嫌で
深椅子にもたれて
水羊羹を掬い取っては口に運ぶ
私は何も言えずに
楽しく笑った

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私たち

私たち
滲んでは涙流れる夕暮れに過ぎゆくだけの昔の約束
君の嘘 君の溜め息 君の哀 解らないままここまできたよ
赤薔薇は二輪照らし出された私たち花言葉遠く距離も遠く
お揃いのトップスばかりを欲しがるの一生一緒の気分でいたくて
さよならに そしてはないの これきりね裏切り重ね傍にいた日々
はじめまして の次の自己紹介 私はあなたにニックネームで呼ばれてた
静寂が二時間前の君の声喪失される眠りたくない
吹き荒れる季節もあったね私たち抱き締めながら歩いていこう
夕暮れにあなたの声が聞こえたわ握り締めたの携帯電話
今からは夢の中で会いましょう朝日をみるまで泣いてるみの虫
愛してる 疲れる愛をしてきたね愛に定義はなかったはずで

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