月と靴と冷蔵庫

靴を履いて出掛けるたびに 冷蔵庫が肥っていく
月を眺めて暮らしていると 冷蔵庫が痩せていく
月が見ている私の距離は 靴で行けない夜の国
そこは 冷蔵庫のいらない世界
そこは 腐らない野菜畑
そこは 神様が見た夢でできていて
死んだ父が 生きていたりする
でも、
地球が靴を掴むから
歩くたびに 私に背中に 重石のような冷蔵庫
生きていくための必要と不必要を 選り分けながら
バーコードや数字の価値に急かされて
進む私の足元を
今夜の月が横顔で 傾げてみせては 照らしつづける

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