桔梗

桔梗
廃屋に
今年も 紫の桔梗が
二輪咲く
植えた女主人は
介護疲れで井戸の中
花弁の輪郭に
思い出をなぞると
過去の笑顔に
辿り着く
砂の城に住んでいた
光の中の男と女
夢のような時間
咲き乱れた想い
疲れはてた花は
色褪せた水中花
まだ 息をしている
植物のような貴方を残して
殺害するより
自殺した
女主人の寂れた王国に
今年も二輪の
桔梗が寄り添う
指で押すと
パチンと蕾は泣いた
叫んだように
裂けて
壊れた

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