恋人たちが一方通行の標識の下で
笑い合うべンチ
斜めの窓際で老人は最後の作品を
綴り始めた
恋人たちの躁病と鬱病への陶酔はなりやまず
老人の遺書は尊厳死に値する
友人の声は巧みな技で好意的
その反面
本性は果たし状
わからないの?
薄笑いを浮かべる年増の女の日記は
私を終焉の真っ暗森へ誘う
傾いた家屋は崩壊を続けながら
瓦礫たちが身にのしかかり
鈍い残響が鼓膜を打ち破る
助けて!
いたずらに発した私の爆声に
見知った女が一人
私の首を絞めながら
「信じるってどうすることなの?」
私の後ろの私に問いただす
その頃両親の危篤のメールは
確実に着信履歴に残っていて
穏やかな神の形見みたいな
アメージンググレースの音楽が
訃報を告げていた
ねぇ、今、何時?

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