鳴りやまない世界

鳴りやまない世界
世界が傾いてみえるのは
私の首が斜めだから?
左手が震え出すと
地球上にない酸素を吸うの
白い粉と錠剤たちに征服されると
私は 世界に弾かれて
何処かで即興的に作られたお経が聴こえるわ
神の国は
ベッドの乱れたシーツの上にも
マッチの火のような
家の灯(あかり)にも
貴女の心音の高鳴りにもあるのに
黄金の骨壷の中の隠し金が
紙の国
世界が傾いて見えるのは
私の首が斜めだから?
貴女は今日産まれて
私は治療費に埋まれて
二人の境目の
「祝福」と「退廃」の生存記号の賃金は
いつもの渡し守から
着払い
今日も空は
何事もなかったように綺麗だわ
なのに
お経が
鳴りやまないの
ずっと神様が笑って見てる
まるで
悪魔のような顔をして

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誕生日の君へ

誕生日の君へ
赤き紅 さしたる君に揺らぐ瞳(め)を 赦したまえと 月が哀願
君が為 望みとあらば 唇に 101回目の プロポーズ
永遠を 誓う契約 夜に描き 君に歌うよ エターナルロマン
紡ぐ愛 紡ぐ指より 絡め取る 僕の未来は 君の小指に
愛なんて 安っぽいのは 嫌いなの 絆になるまで 未来を誓って
一月の 誕生石は ガーネット 指輪は一つ あとはいらない
午前2時 僕が夜空を見てる頃 君の産声 聞いた気がして
これからも よろしくなんて いわないで これからさきも ずっとよろしく

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行方不明の激情

行方不明の激情
ミロ

千切れたこの腕に
愛欲の勝利を
自らを傷つけて
望んだものを手にする瞬間は
  いつも
     残酷で
        ひどく…
     
             愉快だ

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しようか

しようか
猫に 紫陽花  猫と 紫陽花
紫陽花  紫陽花  紫陽花 
猫の秘蜜    味わい太陽
猫に 紫陽花  猫と 紫陽花

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女郎蜘蛛の恋人

女郎蜘蛛の恋人
絡め取ってください
その粘りついた
銀の針で
貴女の真ん中で
紅い鼓動に
とどめを刺して
五臓六腑に飛び散ったベネチアンを
貴女にすべて捧げるから
私を編み込んで
作り替えて
例えば
従順な玩具犬に
例えば
貴女の胸に輝く
琥珀のペンダントトップに
なんにも
怖くはないの
怖いのは
貴女の役に立たない
身体とか
心とか
だから
早く紡いで!
濡れて粘りついた
彼処の糸の煌めきを
貴女の指で
編み込んで
声さえ
あげないから
さぁ 早く
貴女の濡れた指を
私の糸が
触れてと叫んで 溢れ続ける
煉獄の檻の中
もう 我慢できないの
お願い
早く
貴女の内に
編み込んで
狂わせて
嘘で殺して
くちづけて
そして
早く
早く・・・
・・・食べて
ねえ
私の喉仏に
貴女のイニシャルが
成婚の証でしょ

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25時の魔女たちへ

二十五時の魔女たちへ
紅月夜 冷たい指で奏でられ その旋律に桜(はな)は乱れて
温もりを 欲しがる猫にイルバチオ 楽園の香は殺人の味
月の使者 紅き名を持つ魔女の肌  聖痕(キズ)に焼かれて血を流すのみ
恋に酔い サバトに踊る魔女一人 後ろ手に縄 胸元に華
漏らす音 溢れる声も檻の中 肉体(カラダ)すら 心裏切り 主を求め
寒き夜も すきま風すら弾かれて 胸元にキス 下肢に法悦
チョコレート 溶け出した夜に滑り出す 甘い恋こそ 秘め始めなれ
人知れず 25時に咲く桜(はな)の 花弁をエキスに魔女(シトリー)は笑う

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日の出

日の出
黒いとか白とか黄色の肌事情 光射照らせ ラインを超えて

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どこ?

どこ?
役に立たないのなら死んでくれ!
と 父親に言われた事は覚えているんだけど
白い箱
人を置く棚
四つ
みぎうえ
家族が死んだ!
死んだらあかん!
繰り返すカセット
すり減って
三日後 お経
みぎよこ
食べられないのに長生きできる不思議な老人
まえ
気ィくるとんのか!
叫ぶ おばちゃん
手洗い場の白い消毒液が笑う
飲んでみたら甘いよって笑う
ここは どこ
言葉にできない

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知らないおばちゃん

知らないおばちゃん
同じ病棟の隣り部屋に
遠縁にあたる
近所のおばちゃんが
入院した
徘徊しないように服を
太糸で繋がれて
何度も何度でも
「家族が死んだ!」
と夜中叫び続けた
根性負けした看護婦に
家族の声を聞かせるための
公衆電話の十円玉の声は
一日三枚
ねえ おばちゃん
昔みたいに言ってよ
玉葱作りすぎたから
勝手に欲しいだけもっていき!
って
ねえ 喋ってよ
実の娘と娘婿が
ストレス解消に
夜中に虐待を受けてるって
  (どんどん家族が死んでいくのでこわくてねむれられへん)
おばちゃんは
家族を殺してしまった
贖罪のために
頭から樹海に入って
今も彷徨っている
ねえ 戻っておいでよ
片足を引きずりながら
杖ついて
茄子も持っていき!
と 大声で笑っていた
昔なじみの
知ってるおばちゃんに

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未完成

未完成
未完成
玉虫色の瞳
何 映す
欺瞞の世界か
思惑にとらわれた
恋の行方か
その瞳すら
狡猾の輝き
蒼き陰は
秘密を含み
鮮やかに
朱に交われば
身を隠す衣
お前の傾いた
価値観の習性は
直らず
ただ 嘯く装いで
予知夢を疑い続ける
ならば
五感で
映るものの
虚偽を破れ
六感の
スピリチュアルなど
捨て置け!
或る女の
インスピレーションで
描かれたお前も
作者と同じく
また
未完成
魂を
魂を
授ける日まで
今は
楽園を
待て

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