アカイナミダ

アカイナミダ
虚ろな目 濡れた指しか欲しがらない お前を正気に狂わせたくて
足の爪 紅に染め上げ 去る貴女 僕の心もお願い赤に
探してる 君の涙の処方箋 薬局に 愛は売ってなくて
哀しくてやりきれないのに笑う癖 治らないまま付き合う貴女
泣いてみて 泣いて見せてよ強がらず 裸のままで泣こう僕たち
いいこだね ホントにいいこ 私の子 いいこでいるから 僕を抱いてよ
独り泣く お前の影に手を伸ばし 抱きすくめたい 刺さった棘ごと

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晩夏と晩歌

晩夏と挽歌
診断書 狂い死にを並べられ 「手帳」に文字を 殺 殺 殺 と
ヨレヨレの布鞄にしがみつく 私の生と赤い御守り
夏の歌 詠えぬままに瞼閉じ 午後二時に来る 凍える魔夏
証をね 遺すの証 遺すから 最後の仕事 血塗られた詩画集
さようなら 私もうじき書けなくなるの 詩も絵も歌も 生命線も
ありがとう って言いたい人 たくさんで 涙の記憶 忘却の海へ
空高く 夏 何気無い顔をして 命一つを 彼岸に運ぶ
今ならば 詠えるのかな 私にも 透き通る骨 魚の挽歌

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調べなさい

調べなさい
貴方が初めて私に手渡したのは
赤い花でした
私が最後に手渡したのは
青い花でした
もし貴方が
雛罌粟畑で
赤薔薇を一本捧げてくれていたなら
夜には月花美人が咲いたでしょう
貴方は溝に私との時を沈めて
違う花にも赤い花を
添えて量り売りをしたのてす
あぁ
だから私はこの夜の果てまで行って
採ってきたのです
青い森の青い花(バラ)
私も調べます
貴方が私にくれた赤い花の代償金
生産地とルーツ
かかった印税と重さ
だから貴方も
調べなさい
青薔薇の秘密
今年二回もブルームーンがあった理由(わけ)
そして貴方は
知るのです
私が貴方に
青い花(バラ)を
渡さなければならなかった
無数の痛みたちを

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七夕と恋

七夕と恋
天の川 涙で溢す 嘘一つ
織姫や 失恋二つ 織り成して
より多く 愛した罰の 天の川
流しても 沈む笹舟 泥の船
願のない 私を笑え 短冊よ
哀しみを 運べ笹舟 銀河まで
笹の葉に 金銀揺れる 恋心
世の恋を 全て叶えて 七夕夜

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千年の樹影

千年の樹影
千年の樹影
祠に眠る千年皇女
逃れ 逃れて荒御霊
道連れにした偽比女と共に
哀しみを夏の影に宿して
この社に埋葬された
社の神は男神
比女の眠りを誘い
荒神の腕に抱かれ
魂は静寂の星になる
古の御霊鎮めに
千年杉を植え
古刹に濡れた
石板の赤い名に瞼閉じては
私は 思い出ごと
一枚の絵に
すべての歴史を
閉じ込めた

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描く

描く
たくさんの色を秘め
キャンバスは賑わう
桃 卒業式の門出に咲いていた桜並木
黄 ヘルメットと夜行タスキの自転車通学
赤 火遊びのような青春に
  一級品のディオールを唇に纏う
白 リスカをしたら包帯でぐるぐる巻き
紫 神様は紫雲たなびく彼方におわします
緑 横たわった蓮花畑のややらかさ 
青 見上げた空は五月晴れ
七色 恋をすれば虹がかかる
なのに怒鳴り声を聞くたびに
色たちは混乱して
キャンバスは真っ黒
キャンバスの色合いは時を経て
怒鳴り声を聞くたびに
分裂を繰り返し
できあがった絵に
タイトルは
「私」

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閉ざされたアトリエ

「閉ざされたアトリエ」
愛に名を付けてくれと せがむ君 うれしさという名のおさなき子
儚さよ 泪よ時よ愛しさよ 刹那であれ 永遠であれ
雷鳴が去りゆく蚊帳に横たわる 薔薇色の呪縛は 雨夜の月に
君の顔 君の残り香君の味 瞼の奥に閉ざされたアトリエ

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嘘の履歴書

嘘の履歴書
愛猫の 肉球撫でる指先で 嘘をなぞる 紫の履歴書
カンパリにカルパッチョが似合うねと 言った日々を笑え雛罌粟
愛しき子 愛しき母よ 愛娘 女はひとり 三役こなして
お部屋をね 用意するから 側にいて 予約不明の未来予想図
カリカリと 寂しくなれば 口にする 仔猫の憂い 行方知れず
泣きなさい あんな嘘つき 憎みなさい 貴女を犯した 蔦が這う指
顧みて 道に二輪咲く日々よ 君は雛罌粟(こくりこ) 我も雛罌粟(こくりこ)

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さよならと蜂蜜

さよならと蜂蜜
さようなら 思い出包むその腕で 違う男を抱き締める
初めての痛さにも似た快楽を覚えて遊べ 親のない子よ
繰り返し流す涙は行方不明瞳の奥に 騙して笑え
思い出と泣いてる私に犬の咳 命ながらに永らく哭いて
恋人と女友達足して割る未熟な未来はおとぎ話し
綺麗でしょ プレゼントした寒紅を さした貴女が未だに紅く
チョーカーが首輪みたいね笑い合う あの夏の日の仔猫は消えて
口移し から滑り出す チョコレートみたいな初夜の蜜
あなた以外愛せないと嘘をつき生きてしまった六年の罪
さようなら ただそれだけです さようなら お金も愛も持たない私
夜があけて 暁の星が光るころ 貴女の未来が輝くようにと

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月の呪縛

「月の呪縛」
シーツの海で官能の声を張り上げ
貴女はどこへも逝けない薔薇バラの身 
歪んだ口角の行方を知りすぎた女は
可愛いすぎる紅玉を啜りすすられ報いを受ける
相咲き乱れ溶けた胃液のプールで
貴女は独り揚羽の夢に沈む水中花
(赦さないで 赦さないよ)
またこの屋敷においで
背中に刺青 痣の昴は嘘の痕
猫なで声で委ねた膣には
爪先のような 赤い三日月 罪の痕

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