リリー

リリー
リリー
お互いに惹かれ合う
レース糸でも
こんなにも
まばらなモノたちだらけで
一つになろうとしている
ねぇ
リリー
どうか教えてよ
こんなにも
違えた道を選びながら
あなたは
誰と細くても永い糸を繋げて
多彩な作品を
完成するのだろう
ねぇ
リリー
レース糸もリリーって呼ぶ国があるんだよ
そして
俯く白百合も
リリーと呼ばれる
だから
気付いてしまったんだね
僕たちは
同じ顔で編まれた
同系色を覗き込んでは
きっと
自分だけを
愛していた
奥底に秘めた
絡み合う解れに
目を背けて
君を
愛していた
君だけが
僕の完成品
君しか
愛せなかった
リリー
白百合よりも
たおやかで
繊細な糸のひとよ

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月華の祈り

月華の祈り
月華の祈り
まだ
薄紅の蕾のまま
あなたの指先の呪文に濡らされて
開いてみたい
女の子から
女という華に
狂い咲く闇夜の怖さ
しんしんと
冴え渡る
月夜に冷気
絡み合う四肢
幾度も 幾度も
甘い血と蜜を請う
あなたへの微熱に
苛まれた私
身体
柔らかな曲線を
くねらせては
その長い指で
肌 薄紅に染め上げられ
動きに合わせて
私 鳴く
どうか
この濡れそぼる華を
卑しいと
そのまま
捨て去らないで
いてください
あなたとなら
一輪挿しの
薔薇色の夢
永久に
朽ちるまで

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人は泣いて生まれてきたのです
この世の光
未来と夢の翼を
信じて
人は泣いて生まれてきたのです
老いてゆく
置き去りにされる
孤独
夢の翼を休めるな
光射す文字を描け
けれど
忘却の能力は
電子辞書から
文字を暗闇に茫滅
生とは
如何に
自由で拘束された人生を
涙で彩る
産声をあげた
その日から

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少年

少年
新聞紙とは
正反対の方向に
飛び出したがる
明日の犯罪者
遠い国で
死んでゆく
豊かな心の子供たち
日本で壊された
濡れて腐った伝達神経
解体された合体ロボット
弱肉強食のナイフを
握らされたまま
踊らされて
未来を
灰色の空と濁った海の狭間に
祈りを詰めて
流した小瓶
異国には
届かないまま笑われて
地上が微かに揺らいだら
いつかの
少年は
明後日の
護衛車の中で
ゆらり
ゆらり

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恋人の種

恋人の種
空に手が届くくらいに
馬鹿みたいに幸せ
海の底で人形姫に
プロポーズされるくらい
馬鹿みたいに幸せ
君が産み落とす恋人の種
私が産み落とす恋人の卵
目眩がする長いキスをしたあと
那由多の邂逅の向こう側
小さな庭に
淡い光を注いで
君の種を産めますから
僅かな輝きの果て
豊かな信実を育てみてもいいですか

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爪紅

爪紅
思い出を欺いた朱印は
冷たい指先を恋しがって
月明かりの夜に
主のいない部屋で
紅の泪を
足先に残したまま
愛しさ事
剥がれてゆく

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赤い部屋

赤い部屋
微睡むことさえ赦されない
赤い電灯の下で
君の舌を引きづりだし
僕は口腔から僕を入れる
開かれた四肢は朱に染まり
君の中の僕が脈打つ
キャミソールドレスから
爪先から
唇から
肌から
はだけられ
晒された全てから
鼓動が脈打ち
君はピアノの鍵盤の響きに合わせて
流動体の赤血球を泳ぐ
蛇の館に一人
囲まれたカナリアは
泣き顔は見せず歌うだけ
湿ったのは這わせた指先ではなく
遠い雨の日の赤紫のアイリスの芯
誘ったのは君
暴きだしたのは僕
二人が赦していたのは
欺瞞と虚飾の愛の調べ
だから火を点けないで
薄闇の天井に
ポツリ酸素を請う
赤い電球の色彩のままで
独りぼっちの
暮れない夜の
過ちの朱印
文字のない部屋
空っぽの鳥籠
安らかな黒い柩
赤い孤独が滲む部屋

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アトランティス

アトランティス
アトランティス大陸には
化石にならない
私の夢が
沈んでいる
アトランティス大陸には
詩人も歌人も俳人も
知らない言語が
埋まっている
アトランティス大陸は
まほろば郷
探求者も研究者も
調査できない
宝箱
でも
私は知っている
アトランティス大陸は
沈んだの
沈んだっきり
浮かばない
だから
私は
隠したの
アトランティスに
私の夢とか恋とか希望とか
私にしかできない
誰かの事や
あなたの笑顔に
会うために
これから
見つける
もう一つの
アトランティスを

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薔薇食い姫

薔薇食い姫

薔薇をあげましょ 枯れた薔薇たち
ライバルくらいは 蹴り落としてよ
苦悶が溶けないの あなたのせいね
意志の疎通すらも まるで駄目ダメ
悲鳴を上げて降参 首輪締めて哀願
面倒かけ致します これから一生涯
積み木崩しは開幕 持ちつ持たれつ比翼塚
身を詰まされる愛  歌うわ怪人オペラ座で
放さないわ独占欲  離れないはの自己主張
泣き真似はお見事  だから君には嘘をつく
詩とお酒の筆力で  薔薇食い姫に罪はなし
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むすんで  ひらいて

むすんで ひらいて
結んで下さい
私の手首
あなたの知らない
仕事中のネクタイで
開いてください
心の扉絵
バースデーには
飛び出すビックリな
独占欲の交錯で
手を打ってください
誰とでも寝たがるような
私の性欲を
ワンルームへ
運んで調教
結んで下さい
十月十日
やや子が宿る
そのように

開いて
手を打って

開いて
その手を
その手で…

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