ただ君に・・・。

ただ君に・・・。
秒針に胸を刺された夜の華眠れぬ夜に枕を濡らして
いじらしい棘ほど甘い顔はない花のように微笑む嘘つき
秒針の音聞け叩け我が胸の鳴りやまぬ夢の扉を開け
淋しさに唄があるとするならば薄情者が吹くよ口笛
俺の詩は普遍的だという君の普遍性ってなんのメタファー
隠してたでもバレバレの嘘をつく男の言い訳 女の秘密
新しい秘密と陰口増える度 人と人とが夜手を繋ぐ
眠れない夜を数えてモノロクローブー触れる針に揺すれ揺すられ
ただ君に優しくしたいだけなのにコインが裏切る本音の裏側

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黒い箱

黒い箱
黒い箱
長持ちする
飾られた言葉が
優しい配色で
贈られて
私を癒やしては
私の代わりに咲いて
枯れて消えた
せめて
絵にかけば
消えないだろうと
毎日描いて
描き終わった頃
花も枯れて
贈り主も消えた
まるで
始めから予知されたように
黒い箱に
収められていたっけ
私は
水彩画の思い出を引き裂いて
柩に涙を刻む
ラナンキュウスの花束を
勿忘草に替えて
黒い箱に閉じ込めた
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小詩    二編

小詩  二編
【唇】
赤薔薇のように
開いて
赤薔薇のように
咲いて
赤薔薇のように
色づけた
胸に薔薇のような
棘が
刺さったままで

【風の中】
風の中を
旅人は行く
風の音を
纏いながら
淋しそうなフルート
悲壮なヴァイオリン
二短調のピアノ
風の中を旅人は行く
旅は胸に響く
渦巻くうねりの中
すべてのハーモニーを
上手に奏ながら
旅は
続く

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降り積もる雪のように

【降り積もる雪のように】
あなたの望む
あなたにおなりなさい
例えば雪のように
柔らかく白く
降り積もりなさい
やがて踏みにじられ
汚されて逝く
その傷や痛みを
涙や嘘で繕うのです
そうして白い瘡蓋で
覆うのです
人はまるで
降り続ける白い粉雪
自分を掘り下げるように
自分を重ねて行く
   ※抒情文芸134号入選作品 清水 哲雄  選

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斜景

斜景
車椅子は後ろ向きに並び
待合室から掲示板を覗くギョロ目たち
黒鞄の中身は駆け引きと
すれ違う人の胸にはピアスホール
私は泳ぐように歩む
傾いた首で傾いた顔色を伺いながら
俯く病巣の中に
見えない手すりを求めながら
(ジストニアによるケイセイシャケイ。ストレスによるものですね。二年で完治する極稀な人もいますがあなたの場合はおそらく…)
容易く吐露する主治医のサラリーな一声が
耳に残響して早三年
私の見る 人も景色も
斜めに映ったまま陰を沈める
車椅子同士の笑い声に
待合室のいらだち
黒い革靴たちは早歩き
すれ違う人の
異質な私への疑問符は
白いマスクでシャットアウト
私の横目から溢れ出る
情緒不安定な雫たち
斜めに落ちて
いつも 誰かに踏みつけられていく
窓際で
傾いた頬にほおづえついて
睨んだ夕陽さえ
斜めに暮れてゆく

 詩と思想六月号入選作品

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五月

五月
失った若草色の
色鉛筆を探して
新緑の森を過ぎ去る
透明な風
慌ただしい太陽が
恥ずかしがりながら
月に隠れた一瞬
瞬きもせずに
光った空の詩
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涙の後始末

涙の後始末
涙の後始末
悔しいことも
理不尽な扱いも
みんな溜め込んで
吐き出すことが出来ない
泣いていいよ
話すことは
放すことだからね
でも
鋼鉄の口からは
無言の悲鳴が
響くだけ
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禁色

禁色
禁色
白いあなたを
私が神仏の前で堕落せたのだ
私の中に潜む
楽園を追い出された
蛇が
あなたを絞り上げた
零れたあなたの
白い羽の残骸が
私の身体を汚すように浄める
あなたに授けた
獣が片時も
業火の中で
吼える
あの時
強引に
塞いだのは
まっすぐに泣く
あなたの
「愛しています」
きっと
それを聴くと
私は泣いてしまう
自分が
女であると気づいてしまう
あなたを
飼い殺しにして
置き去りにする
自分に
あぁ、
雷がなる
神鳴りが聞こえる
二人の声を燃やすように
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バイバイ。人差し指

バイバイ。人差し指

怖いんです
すべての人の手にある
人差し指
怖くて怖くて堪らない
私に与えられた
時計の針を
時計回りに
人差し指でぐるぐる回す
すると
人差し指が私の胸を刺す
人差し指が私に向けられ
笑い出す
怖いんです
人差し指
生きていくのに
邪魔な人差し指
今日
切り落としました
誰も笑わなくなった
四本の指の世界に
くるまって
今度目覚めるとき
時計は
止まったまま
朝を告げない
バイバイ
人差し指の悪夢
おやすみ

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夜に落ちる

夜に落ちる
朝日が
沈んでくれないかな
と 思う日に限って
夜に落ちる
たとえば
昨日の誕生日ケーキの
蝋燭の火を
誰かに明け渡すような
老木の哀しみを
新木に知らしめるような
リレー始まっている

私が脱皮したぬけがらを

自分で見なければならない
朝日の角度は鋭角で
目眩をおこす
歪な風に吹かれながら
とぼとぼと
蛻の殻になって
捻れながら歩む私の道のりの
背後からは
夜がしたり顔
朝日が沈んでくれないかな

言わんばかりに

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