サイコパス

サイコパス
サイコパス
愛してはいけない人に恋してる
身の程を知れと言ってるみたい…
空を串刺しにする
伸びやかに しなやかに
聳え立つ あなたは一つの
強い意志
張り巡らされた
全ての策略も
戦慄のシナリオに変えて
街々を飾るひとつの
突き抜けた電波頭脳
私は
あなたの空を
泳ぐ鱗雲
あなたの青さに
染まって消える
過去に流れて逝く
透明な白
だから
私にも 発信して
これ以上の悲劇はないほどの
喜劇のような終わり方
恋しては消えてゆく
秋の高みから
狂った舞台の
サイコパス
もう
愛せないように
殺された
女が墜ちる
空(から)舞台

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片手鍋

片手鍋
私の傍にはいつも片手鍋があった
「両手鍋ならお前にもっとおいしい御馳走や幸せを味あわせてあげられたに・・・。」
と 豚肉が傷んだいきさつや
胡瓜やもやしが腐ってしまった原因を
ガスの火で燃やしては 蓋をする鍋だった
片手鍋は孤独だった
はじめは両手鍋だったのに
片方が勝手にもげて
キラキラ光るステンレス鍋の
お料理を貪るようになったから
その愚痴を片手鍋は言わないで
夜になると黙って ひとり グツグツと
湯を沸かして深夜の食を作り
料理が冷え切るまで
両手鍋に戻れる日を信じて待ち続けた
煮えくりかえった鍋から
熱い湯がこぼれても
遠くにいる片手鍋の持ち手は気づかずに
床を拭おうともしなかったし
鍋置き場から
片手鍋が転げ落ちて修理に出されても
そろっていたはずの持ち手には
関係ないことだった
その頃片手鍋の持ち手は
ステンレス鍋と新しい愛妻料理を
笑って作っていた所だったし
出来上がった品に【私生児】と
つけられるのが怖くて
台所の洗い場にお金と一緒に流して片付けた
私は私の傍に三十余年一緒にいた
片手鍋を信じている
片手鍋は賢かった
片手鍋は涙もろかった
片手鍋は情が深かった
片手鍋は…
もう錆び付いて
自分が鍋であったことも
忘れてしまったけれど

詩と思想11月号執筆依頼掲載作品

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同じ星

同じ星
あなたの孤独が
空から降りしきる夜は
遠い星の 夢を見ている
   *     *
見上げたあなたは
ただただ 遠く強い巨星
見下ろしたならば
あなたは生まれたての七つ星
あなたの名前を
並べてゆくと
宇宙の理に引っかかる
その先っぽからでいい
空から私に雫を垂らして因子をください
私はあなたに似た星を宿しては
その詩(こ)を
空へ解き放つ
私たちは 言葉で繋がれた
同じ涙の同じ星
同じ孤独抱えた星が 出会う確率は
東京行きの新幹線の中を 淋しさで逆走しても
辿り着いてしまう
あなたの駅に あなたの声に あなたの中に 
取り込まれて 墜ちてゆく
それはとても 悲しいくらい 100パーセントの引力で
   *        *
同じ星
だけど なんて 遠い星 
探しても探しても探してみても
涙が止まらないまま
夢から覚めない夢をみている・・・

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ワガママ短歌

ワガママ短歌
ひとひとり愛せないくらいのわがままで告白したいあなたが好きだと
昼下がり微熱を帯びた過去の汗あなたの風邪はもう癒えましたか
愛せない愛せない人を愛してる躊躇う私を殺して欲しい
声すらも優しさすらも体温も全てを奪う白い錠剤
震災が繰り返される夢をみて鯖の味噌缶だけの夕べ
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白い蜃気楼

白い蜃気楼
束ねていた栗色の髪をほどくように
その髪をかきあげるように
耳もとで囁いた告白は
僕の詩を書き始めた頃の
青臭いペンネーム
ほどかれた髪の上を
滑り出して
僕の詩はたなびいた
堅苦しい
もう一人の僕の名と一緒に
柔らかな風に吹かれ
君の笑顔に舞う
戸惑う僕の思いの丈
 (好きなんだ
   詩を描くことが)
そう告白したのは
新緑が芽吹いた
大切なひとへと向かう
それは いつかの
白い蜃気楼(ミラージュ)

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意味のてのひら

意味の手のひら
誰かの為に歌うことになんの意味があるのだろう
ティシュを配るアルバイトの
彼氏を待つ女の腕時計の
パチンコの呼び込みの定員の
男を一時間半待たせて謝る女の
巨大な街に
飲み込まれなから
人は人と出会い
人に学び
人を知り
人と別れ
そのたびに
誰かの為の歌を
人は歌い始める
まるで握手した人数分の
手のひらの皺を数えるように
刻む記憶の悲しさ 深さ
あぁ、私は人の為に
歌った事がない
見ておくれ
この
皺ひとつない
理屈ばかり語りたがる
無意味な
手のひらを

詩と思想10月号佳作作品

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ぬけがらになった心臓
ちからない白い腕
青白い血管が浮かぶ両の脚
広げさせ 広げさせ 広げさせ
瞳孔だけを動かす 私の裸に 指先から脚の爪先まで
少しずつ 少しずつ
細く長い針を刺す あなた
痛みを感じるまで赦さないと誓う
あなたは
私を甦らすために泣きながら針を刺し続ける
私は青白い死体の標本だ
あなたの涙で黒い髪は艶やかに濡れて
青白い血色は蛍光色となって
悲しみが哀しみを呼び覚まし
恋しさと愛しさは同化して
動脈が振動し始める
全身に刺さった棘に灼かれ
羽ばたけぬことに赦しを請い 
苦痛の理由に涙を流す
死体から無痛の淋しさと悦びを背負って
私はいつか羽ばたくだろう
あなたが「蝶」という名の理由を授けた頃
私は標本箱の中で 一瞬だけ
綺麗に羽ばたける蝶
あなたはそっとその箱を
瞳にしまう
微笑みながら
微笑みながら

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生きる夢とあちら側

生きる夢とあちら側
同じ道違う道ゆく人が交差する句読点の分岐点
誰のため生まれてきたか知りたくて空に手を伸ばす昔の少年
地図にない街を自分で創っては嘆いて壊す生きる手応え
現実と汗と涙の狭間から出てくる夢は「自分を信じる」
容赦なく削らてゆく命の火ちっぽけな人が人を照らせる命の火
育つ愛誰の手のひらにいよいとも最期は黙って独りぼっちで
過ちは愛したほどに狂おしく君の胸には棘を遺して
どこまでも続く坂道を登りつめそこから何が見えていますか
もう耳も目も見えないし動けない私を見ているそれは神様

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愛憎

愛憎
恋すれば恋するほどに憎らしく裏切り者の手首を切る朝
親だとかウザイばかりの関係を洗い流した血色の風呂
おとうさんもうすぐ死ぬ死ぬいうけれどあとどれくらいお金がいるの?
おかあさん体が動かないというけれど病院通いはいつでも達者
口ばかりたつ子は要らない家の為働けない子は施設送りに
真似事の詩なんて書いて家の恥さらす詩集に払う金なし
好きな人信じてみても届かない嘘ばかりつく触れない人
ついていこう何度も決めたの君の名をナイフで抉り安心した過去
愛すれば愛するほどに美しく殺めるように絡んだ身体
蛇の恋雌雄の区別がないほどに永い間揺すれ揺すられ
口づけた舌が解けた日の朝にサヨナラだけの言葉を遺す

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私は赤いハイヒールと、仮面を着けてワルツを踊っていた。
男は、ずっと私をリードしながら テンポ良く
ワルツの足運びから、姿勢、目線、腕の置き方から
全て優しく教えてくれた。
いや、この場合い、教え込んだと言うほどに
長い時間、男と踊っていたのだと思う。
舞台は、高層ビルの最上階にある灰色の屋上だ。
男の顔は見えない。
私から見えるのは優しい声の下に秘めたように時折顔を出す
チロチロと地獄草紙の炎のような舌と
首筋にかかる男の妖しい息遣いだけだ。
首から下の裸身は程良い汗をかいていて胸板が月に照らされて
なまめかしい臭いを放っていた。
くるりくるりと大きな円を描きながら、リズムよく
二人のワルツは流れる。
男は自嘲的な声で私にこう囁いた。
僕は君の仮面の下を知っているよ。
でもそれを言い当てれば君は僕を殺しにくるだろう・・・。
そう言いながら、あの蛇のような舌を私の中に差し込んで絡みつかせた。
私は仮面を取ろうとした、苦しい、息ができない、そして熱くて激しい。
私の舌は男の口に吸い取られるように、飲み込まれようとする。
もう・・息ができない、このままこの儀式が続けば、私は死んでしまう!
私は男の舌を噛み切った。絡み合う唇の中で
イチジクの実が裂けたような味だった。
男はもつれる舌で言った
君が君の探し物を見つけるまでは僕は君に殺されない。
そして君は僕に殺されるように愛される と。
男は言い終わると屋上から身を投げた。
私は一人で上手に踊っていた
男が教えたステップで 男の舌を味わいながら
ずっと ずっと 上手に踊れるようになっていた。
     *        *
賑やかな音がする。 夏祭りだ・・・。
アイスクリームを買ってくると言った彼氏がいなくなって二時間。
私は人に揉まれ人混みをかき分け、彼を必死で探した。
新調した白い浴衣とピンクのあじさいは転んだ時に色を変えた。
顔は泥だらけになって彼を探した。
いつしか私はしゃがみ込み声を上げて彼の名を、叫んだ。
私の喉はしゃっくりをあげカラカラに渇いていた。
膝頭からすりむいた赤い血が塩っぽい涙を零してじわじわと沁みた。
赤い鼻緒の下駄は 片方なくしたまま片足は裸足のままで
彼のために小さく結った髪も、ばらばらと半分顔に垂れ下がり
私の着飾った想いとは裏腹に、道行く人の失笑が
ますます私を惨めにさせた。
ふと緩くなった帯留めの下に隠していた鏡をのぞくと
そこには、恋に破れた小さな「魔女」が泣いていた。
探しても探しても彼は来なかった。
ほどける金魚のような自分を引きずるように
泣きながら独りぼっちの家に帰る
恋しかった 会いたかった 
最後まで傍にいてくれると信じていた。
    *         *
高台からそんな私の姿を見つめて笑う男がいた。
彼はずっと見つめていたのだ。
真っ直ぐ自分だけでいっぱいになってぼろぼろになってゆく
私を、この大勢の人混みの中でも真剣に見ては微笑んでいたのだ。
そして一言
なんて君は素敵なんだろうねぇ
僕が望んでいたのはそんな風に泥にまみれて綺麗になってゆく君
僕のために血を流し傷ついても僕を探す君だよ
あぁ、そんな君をずっと探していたのは僕の方かもしれないのにねえ・・・(笑)

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