朝顔と青蛙

雨がちになり、やっと秋の気配がただよいはじめました。
今年はほんとうに猛暑の長丁場でした。蛇でもぐんにゃりと伸びてしまいそうな。
水野さんから頂いた朝顔の苗2本が、この庭は日当たりが良くないので最初は発育が遅れていたものの、ちゃんと蔓を伸ばし、あわてて立てた竹を伝わって軒近くまで這い登り花を咲かせています。
団十郎という品種で、色はご推察どおり海老茶色、葉っぱは地模様のある面白いもので、毎朝咲く花の数を数えて楽しみしているのですが、昨日の朝、雨戸をあけた時、葉の上に小さな青蛙がいるのを見つけました。
日当たりが良くないといっても南側の一番日当たりがいいところ、ちょうど目の前の蔓の上に体長2センチほどの青蛙が眠そうに半眼あけて坐っていました。青蛙を見るとつい思い出してしまう 〈青蛙おのれもペンキ塗りたてか (芥川龍之介)〉の句ですが、ほんとうによく見ないと判別できないほど、いきいきとした葉っぱ色。
それぞれの鉢に3本立ててぐるぐる巻きつけるやり方に失敗したので、それぞれの長い一本にどんどん這い上がってきたのを互いに交差させたりしていましたが、その平行になったところの、蔓本体と葉と蕾の三角地帯に、小さな身体を乗せていたのです。柔らかな喉がひくひく動いているのがわかり、目の前に人の顔があり、間近に寄せても恐れません。半眼の眼が少し細くなるのは、又眠りにはいろうとするのでしょうか。
どこからやってきたのだろう。そしてなぜこんな朝顔の蔓の上のほうにまで・・・・? わざわざこの細い蔓を上ってきたのだろうか? 小さな小さな青蛙、蚊でも食べようとするのだろうか。
その日出かけて帰ってきた時も、まだ同じ状態でそこにいました。夕方になり雨戸を閉めようとするまで・・・・。
その時は黒い小さな眼をパッチリ開けて、少し位置は変わっていましたが、そのうちに葉の真ん中にぴょんと乗りました。それでも滑り落ちる事はないほどに軽いのでした。そのままでいることを願いながら、しかい暫くして見るともう姿は消えていました。
ぴょんと下の草むらに飛び降り、どこかへ行ってしまったようです。
かつて道端に青蛙がいたので、少しだけ滞在してもらおうと、捕らえて持ち帰り、大きな水盤風鉢に入れ、きちんと蓋をしていたつもりなのに、朝になるともうどこにも姿かたちはありませんでした。あの体で重たい蓋を持ち上げたとは考えられません。蛙はどこか妖術使いめいたところがあります。

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