南風洋子さんを悼んで

残暑というより猛暑のぶり返しで暑い。
昨日の新聞で、南風さんの訃報(77歳)を読んで、驚いた。
というのもほんの先ほど、民芸の舞台で、毅然として若々しく、華やかなその姿を拝見したばかりだったからだ。
7月1日のブログに、その紹介と感想を書いていますが、その時はすでに病を内にもち、それを抑えての演技だったのだろうかと思うと、胸に迫ります。
「林の中のナポリ」は、山田太一さんの書き下ろしで、南風さんを主人公に設定しての作品であるという。
少女時代の引き揚げ体験、故郷の神戸での2度の空襲などの人生の重みを一杯抱えながら、宝塚のトップスターを経て民芸に、そこでもいまや北林谷栄、奈良岡朋子さんらにつぐ代表女優として活躍されていたのに・・・・。(民芸にはお嬢さんの若杉民さんがおられます。)
ブログにも簡単に入れたけれど、この作品は南風さんを象徴するような作品であった。たくさんの悲しみ、傷み、苦しみを現実には抱えながら、自由にはばたく夢を持って、すっくと独り立ちして生きる、いや生きようとしている美しい老齢の女性を主人公としているからである。
劇ではペンションのオーナーたちをはじめ若い宿泊客たちにも、そんな生き方の自由と、それへ向わせる勇気を与えた後、そのなぞの老婦人は一体どこへ行ってしまったのか、暗示的に終わるのも、何やら南川さんの最期にふさわしいような気がする。でもこれは全く私の後から考えた一人解釈で、私の眼の中には、ただただ気品に満ちてきりっとした南風さんの、美麗な姿だけが残っているという事です。
どうかあの世でも、うつくしく輝いていてください。
ご冥福をお祈りします。

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