パーティーの流血

 何かのパーティーに昔からの知人であるイラストレーターのMと出席している。かたわらには編集者のHがいるが、現在のHではなく若き日のHである。Mは最初はぼくと話していたのだが、別の男に「Hさんは何を贈っています?」と尋ねる。男は笑って答えない。ぼくもMも無言になる。ぼくは、どうせMはほかの出席者と話しているのだから、自分も誰かほかの人と話せばよいのに、なんて自分は社交下手なんだろうと、自己嫌悪におちいる。
 Mがまた徐々にぼくの方に顔を向けかけたとき、壁づたいに一人の警備員が何かを探すようにしながら、右へ歩いていくのが見える。さらにその上の天井近くの壁を、ネズミのような小男がするするとつたって、コーナーの壁にかかったカーテンの向こうに消えた。ぼくは一瞬、それは警備員の影かと思ったが、そうではなかった。そのことをMに話しかけるうち、警備員は4人に増え、彼らは一斉にカーテンの向こうに踏み込んだ。そこは、壁の途中に隠された小部屋になっていて、開いた入り口の向こうに怪しい男の背中だけが見えた。男は身をひるがえして逃げようとするが、警備員はピストルを発砲し、男は撃たれて血が流れ出す。だが、男は軽傷だったらしく、警備員に引き立てられてフロアに降り、悠然とにこやかにパーティー会場の人々を見回す。出席者たちから「あれは○○大将だ」「演じているのは中曽根○○だ」という声が上がる。そんな中を、男は警備員に引き立てられて、行ってしまう。

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