ねえ

伯母がなくなった。母の姉で97才、随分年の離れた姉だった。これで母の兄弟、姉妹7人全員がなくなった。なんだか死の前線に立たされた気分。今度は自分を含め、いとこ達の世代に死がやってくる、そんな気分なのである。
 中井ひさ子さんが8年ぶりに第三詩集を出された。『思い出してはいけない』というタイトルで少し幅の狭いハードカバーの素敵な詩集である。中井さんの作品は、ほぼ読んでいるという間柄なので、私はあまりよい読者ではない。個々の詩が書かれたときの状況?などが、どうしても思いだされてしまい、先入観がぽやぽやっとじゃまするのである。でもこんな個人的なことは関係ない。帯に「ちりちり痛む26の寓話的詩篇」とあるように、大きなやけどでヒーフー叫ぶのではなく、読むごとにちりちりちりちりどこかが痛む、切なかったり哀しかったりふっと笑ってしまったりの、そんな作品群である。彼女がそこにいるような作品をひとつ紹介したい。
   ねえ        中井ひさ子
 公園の石段で
 イグアナと出会っても
 黙って横に座る
 見なれない風だって
 吹く
 せっかくだから
 ねえ
 関わりあい方の
 練習してみる?
 ずい分ながい間
 確かめること
 忘れていた
 身をよじって降りてくる
 空を
 他人事のように
 見上げる
 並べて置いてきた
 いくつもの
 語らない耳
 泣かせるね
 乾いた
 その目

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