背後にあるまぶしさへの予感(あとがきから)

詩を書いていておもしろいなあと思うことがある。それはお互い、詩は知っているが相手には一度も会ったことがない、そんな人が圧倒的に多いからだ。それなのに詩誌の交換を何年もやっていると、昔からの知り合いだっけ、みたいな錯覚におちいる。作品を通して勝手にイメージをふくらましてしまうのである。お互いの日常の姿なんてほとんど知らないのに。まあ必要はないけど????でも詩はごまかそうと思ってもどうしてもその人の本質的な部分が出てしまうので、もしかしたら日常の仮面スタイルに惑わされないで、その人と対峙できるかもしれない。なんて思った。『二兎』同人の佐藤真里子さんは北の果てに住んでいる。詩がなければ、知り合うこともなくお互いの生涯を終える・・・はずである。ところが彼女の第5詩集『水の中の小さな図書館』の書評をある詩誌に書くという役がまわってきた。お互い見ず知らず・・・・彼女の詩集全部読んで勝手なこと書かせてもらった。やさしい彼女のこと、お菓子とか送ってきてくれたなあ・・・それから個人的つきあいが始まった。別にお菓子がきっかけではないです。詩が良かったからですけどね。
     ユダの軌跡
             佐藤真里子
   またしても
   のどが渇くから
   無言のあなたの愛
   という 手垢の濃い絆
   かるく ほどく
   「やっぱり おまえは・・・」と
   言われ続けてきた日々
   肝心な時には
   いつでも のどが渇いていた
   その度に
   水道水
   その度に
   私の宇宙 傾き
   その度に
   陽に背く座標へと
   走ってしまう私
   渇くのど
   潤す水
   多量なら
   落日 きれいなら
   捨ててもいい
   皮膚になじんだ朝夕
   稀薄になっていく胸の
   夢 入れ替えてもいい
   化粧などするものか
   お嫁になど行くものか
   少しずつ
   いびつになっていく地球の
   窮屈な日曜日
   歯など磨くものか
   パンツなどはくものか
   梅雨明け宣言 聞き流し
   堕落した雨に浸ったまま
   夏の欠落
   またしても
   渇くのど
   多湿と思う明日
                   第一詩集『ユダの軌跡』より

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