二篇の詩を

震災をテーマにした詩を読む機会が増えました。書かずにいられないという気持を多くの人が持っているのだなあと思います。私自身は書きたくても、自分の立ち位置がふらふらしていて、書き始めることができません。今日は、震災に関連した詩を二篇紹介したいと思います。
   
      猫のネコ
           小柳玲子
  大きな地異があり 震源から離れた私の家も生まれて
  初めてのように揺れた 火も消さず庭に飛び出た私は
  木の根方に座り震えていた
  見ると茶猫が一匹 ブロック塀の上を怯えて走る
  猫にも異変は分かるのだろうか
  かわいそうに!名前でも呼んで落ち着かせてやろう
  シロでもないしクロでもないし チャって名前はないだろう
  し 「ネコ!」と呼んでやった
  仰天した猫は愚かにも堀から落下
  そのまま隣家の方へ遁走 ばかな猫だ
  揺れが静まり 暖房の火を消していると
  見慣れぬ隣家が目に入る ガラスが割れ落ちて
  古びた座敷の中が見える
  あの茶猫が涙をぬぐいながらしくしく
  泣いているではないか
  主婦らしい女性が猫を慰めている
  「まあ 四十年もお隣にいて お前の名前を知らない
  のかい?」
  「あんまりと言うものです」泣きながら猫が答える
  へんな猫
  夜ふけ 余震に怯えながらセーターのまま眠る
  猫って四十年も生きるのかなあ
  と考えては眠る
  私はいつの間に猫の言葉が分かるようになったのか
  と考えては ガバッと目が覚める
  大きな地異の余波で 古い遠いあの隣家が地底から湧
  いてきたのだろうか と思ってまた眠る
  ネコや 茶猫 お前は誰だったろう
  呟きながら 眠る
     
    立夏の街
            豊原清明
  
  なくなったひとの破片のような
  硝子
  恋人はなく 家族だけがいる、この街
  
  阪神淡路大震災と その、 震災詩
  あれから十六年
  今年の災害に祈ることは
  何だろう?
  津波のニュースを見た夜
  ピノキオみたいに
  夢のなかで
  鯨ではなく パンダの腹のなかで
  父と溺れていた
  震災はー壊す・・・
  何者か得体の知れない、
  ティラノザウルス、否、ゴジラ、否、
  コスモの爆発、否、心の傷だ
  それでも、ほっとするのは
  世界中が心配していること
  皆と、悩みを語れるから
  希望が生まれるだろう
  希望、それはいつも、いつも
  僕に出来ることは
  つたない祈り
  祈りがすべて
  三月、四月、五月、
  生かされている
  きょうは疲れた
  辛かった
  涙がにじむ
  そして、夏、
  が、始まろうとしている
  飛んでくれ、紙、飛行機・・・。
   

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