今の平和憲法を守ろう、9条を守ろうという動きは各界にあって、詩人たちもあちこちで声を上げているが、この雑誌もその主旨にそって、単にスローガンではなく良い詩、エッセイを書いていこうというもので、詩人の羽生康二さんや甲田四郎さんら何人かが呼びかけ人になって去年の10月に創刊された。
『いのちの籠』という命名は、中 正敏さんの詩によるもので、それを次に紹介します。
いのちの籠
中 正敏
人は水にすぎぬものとしても
水が洩れぬよう
いのちの籠をたんねんに編む
編み糸や葭 ひご あじろなどの竹類
もので編んでは隙きまが漏らす
自身の深い井戸底
暗いおもいが光の芒で籠を編む
遮るオーバー・ハングの壁は
爪で剥がして爪をそぎ
血まみれになって空を捜して
千年 あるいは万年疑って なお
ピアノ線よりしなやかに弾み
まっすぐ伸びる光の糸で
億年 人はいのちの籠を編みつづける
(2005年4月)
わたしは戦争を知っている世代ですが、実体験には乏しいので、反戦をこめた詩を書くのは難しく書けるかどうか分りませんが、反戦の気持ちは決して揺るがないので、そのことだけを基盤にして広やかに間口を広げているこの雑誌の趣旨に賛成して参加したのでした。
2号が今年2月に出て、そこにエッセイを掲載してもらったこともあって、この日曜日、「第2号の会」に初めて出席してみました。
その席で先ず最初に三井庄二さんが「高校生が反戦詩をどう読んだか」という報告をした。都立の定時制であるため、かえってちゃんと生徒たちは対応していると感じたのですが、そのことからすこし離れて、今高校に限らず教育の現場の締め付け、生徒の管理が年々厳しくなっていくさまをひしひしと感じました。
そんな時、わたしは何年か前に見たドキュメンタリー映画『軍隊をすてた国』コスタリカ、を思い出します。中米のコスタリカは小さな国ですが、そしてアメリカという大国から常に脅かされてもいるのですが、またそんな小さな国と、帝国でありたいという幻想を抱いた政治家や実業家がたくさんいるだろう日本とは比較できませんが、そこでの教育のあり方です。
コスタリカは何よりも人間を育てる教育に力を入れているそうで、軍事費をゼロにした分その多くを教育費に注ぎ込んでいるとのこと。そのため識字率も世界有数(93・5%)だと言います。しかも学校は単なる知識を習得するだけでなく、話し合いの技術を学ぶところとされ、その過程で徹底的に平和教育がなされているというのです。子どもたちは丸く輪になって、いろいろなテーマで話し合いをする。そこで議論や表現の仕方を身を持って学んでいく。大きな問題だけではなく身近なプライベートな悩みまで話し合い、皆で考えていくのだそうである。奇麗事すぎるかもしれないけれど、基本的な点だけはよく分ります。
今、教育基本法に「愛国心」を入れようとしています。誰でも自分が生まれ育った国が良い国で、誇れる国でありたいとは思うものです。オリンピックでも分るように、日本が金をとって欲しいし、日の丸も上げたいし君が代も聞きたくなるのです。どんなに貧乏でも醜くても自分の家族は軽蔑されたくないと思うと同じです。
ですから「愛国心」の教育など必要ないと、わたしは思うのです。その代わり「平和」教育をすれば良いのです。多分コスタリカではそうやっているのではないでしょうか。子どもの心も脳も白紙ですから、刷り込み、教育が大切でしょう。日本の戦時中の教育然り、また今でも独裁国はそうしているのでしょう。「愛国心」が必要なのは、国家が強力な軍隊を作ろうとしているからにちがいないとわたしは思っています。
少々大演説をしてしまいました。ちょっと恥ずかしくなりましたのでこれでやめます。
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