映画『スーパーサイズ・ミー 』を観る

ファーストフードを一日3食一ヶ月食べ続けると、人間どうなるか? 監督(モーガン・スパーロック)の身を挺して実験台となり挑んだドキュメンタリー映画。現代食文化(特にアメリカ)への警鐘を鳴らす映画であった。
詩人のアーサー・ビナードさんもたびたびエッセイなどで触れているが、アメリカの肥満の実態は想像以上のものらしく、成人の60パーセント(約1億)が過体重か肥満で、その肥満も日本とは桁が違う感じがする。小食にするため、胃の手術をして小さくするなど、新聞でも読んだことがある。
それは車社会や金満家の飽食ということがあるにしても、それよりもファーストフードによるものであることがよく分る。しかも食への意識が高くなった上・中階層よりも下の階層の方が影響著しいのである。
実験台の監督はスリムな健康体であった。その恋人も美しく聡明なベジタリアン。その実験過程を医師たちが計測し見守りながら始まった。大手のマクドナルドの製品だけを食べ続けるのである。
その結果は、最初は確かに人間の味覚を研究され尽くされて味付けされた世界的な食品であるため、美味しいのである。「カロリー天国だ。これをかぶりつく幸せ」と、彼は冗談まじりに言う。だが、3日目になると、胃の調子が悪くなり、5日目で栄養士から摂取多過を注意される。7日目で胸苦しさを、9日目で気分がめいってくる。しかし食べても直ぐまた食べたくなるという。一種の中毒症状であろう。コカコーラが世界を席巻したのは、あの味には一種の中毒症状を起こすものが含まれているといわれたものだが、これもそうだろう。体重は12日で7.7キロ増加、お腹も出てくる。18日目になると「最悪、頭痛がして目玉の後がずきずきする」。血圧もコレステロールも上がり、肝臓も異常をきたしてくる。そして21日目に、とうとうドクターストップが出る。これ以上は危険だと。
22日目から、マクドナルド社への取材申し込みなどアタックが始まる。しかしそれは見事にかわされる。
各店への成分表示表などの提言や利用者へのインタビューをしたりして、その後階段を上るのも苦しくなるほどになりながらも何とか30日目を終える。
結果:体重は11キロ増え、コレステロールは65上昇、体脂肪も7パーセント増加。砂糖は一日約450グラムの摂取量。
気分はさえず、疲労感があり、情緒不安定になり性生活はないに等しかった。食べるともっと欲しくなり、食べない時は頭痛がしたという。
これ以上続けるとまさに命取りになっただろう。
アメリカの多くの栄養士の提言として、一ヶ月に1回以上ファーストフードを食べることをすすめないし、これを食べることは「肥満の重要な原因」という調査結果が出ているという。
それでいてなぜファーストフードが栄えているのか。
次にパンフレッドにあったデーターを挙げる。
アメリカでは毎日、4人に1人がF.Fに足を運ぶ。
食事の40パーセントは外食に頼っている。
年間消費額は1100億ドル。
マクドナルドは毎日4800万人によって利用されている。(>スペインの総人口)
マクドナルドは6大陸、100カ国以上(マクドナルドによると121カ国)に進出。合計店舗数3万店以上。
マクドナルドは頻繁に利用する客を「ヘビー、ユーザー」と呼ぶ。
マクドナルドはアメリカのF.F産業の43パーセントを占めている。
スーパーサイズというのは肥満の体格の比喩かと思ったら、それだけではなく、ハンバーガー、フライポテト、コーラのサイズをも示している。すこし高いだけで、大よりも一回り大きいスーパーサイズが買える。
人間の心理からも、また労働者や、貧しい者ほどそれに手を出すことになるだろう。それを売り出すことで消費量が大きく増える。しかも恐いのはTVのキャラクターで子どもたちの人気者となり、また店には子どものための遊具や遊園地まで併設していたりして、子どもの記憶や味覚への刷り込みもちゃんとしていることである。
食べるか食べないかは自己責任だろう。そしてアメリカ人も愚かではない。しかし資本主義の根幹を成す企業という見地から考えると、この体質を変えるのは困難だろう。
さてそのス-パーサイズであるが、この映画が公開される頃、廃止されたとか。しかし映画とは何の関係もないとの会社の発言。
日本では、今はそれほど問題ではないだろう。しかしアメリカ追随のお国柄、警戒しなければと思った。

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