このところ年に一回インド音楽(シタール演奏:堀之内幸二氏)を聴きに行っているが、今年は女性としては珍しい壁画作家の田村さんとのライブ演奏である。台風も幸い海上にそれ、秋晴れとなった昨日の事。
油絵画家として模索中に田村さんはインドに行き、砂漠で生きる女たちの姿に魅せられ、そのような酷しい自然の中で生きる女たちを専ら描き続け、それが世界各地で壁画を描くことによって大きく開花したようである。その生涯と作品が、第1部の画廊主との対談形式で語られ(「誰も歩いてこなかった絵筆の道」)、第2部では主要作品がほぼ年代順にシタール演奏とともに大型のスクリーンで映し出される、コラボレーションだった。
中国の西安の「唐華賓館」の壁画を頼まれたことを皮切りに(40歳を過ぎたころからのようだ)、その後次々に59箇所の壁画を書き続けたという。日本だけでなくバンコクなどもあり、豪華客船飛鳥Ⅰ号、Ⅱ号、横浜のみなとみらいのコンサートホールなどもある。描かれるのは女性ばかりで、しかも自然の中に溶け込み生き物たちと共に戯れ楽しむ集合図で、そのためホテルはもちろん病院や老人ホームなどもあり、禅寺の襖絵も依頼されたというのも興味深かった。
壁画であるから足場を組んでその上に立って描く。しかし飛鳥では船中のため足場が組めずロープにつるされたゴンドラに乗って描かねばならず、全体像を確かめるためにはいちいち足場を下りねばならなかったり、肉体的な労力も想像に余りある。細身の田村さんから迸り出るその情熱と力に感嘆した。
それら壁画を映像にした技術も素晴らしく、アップにしたり部分をズームしたり、キャプションやナレーションもあり、動画ではないものの田村さんの画家としての足跡や自然や絵画に対する考え方などもおのずと辿れて次第に惹きこまれていった。そしてそれは絶え間なく流れるインド音楽のシタールの演奏(この日のために新たに作曲したものもあるとのこと)が素晴らしく効果的で、絵画と音楽が共に響きあって画面の壁画の世界に吸い込まれていくようだった。会場を後にしてからもその旋律が耳の底にいつまでも残った。
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