台風17号が伊豆半島沖を通過しているため、上空を灰色の雲がゆっくりと南西へ流れています。
その下には、眼下の谷戸を隔てて雑木林が横たわり、この場所が気にいったのもそれがあるからでした。
右手の家並みは駅へと続き、その甍の波に泳ぎだそうとする大きなクジラのようにそれは横たわっています。頭に当たるところには立派な長屋門があり、それをくぐった屋敷の中には母屋と竹林を含んだ広い庭があり、その背後が雑木の小山になっているのです。それが目の前に広がる林で、このあたり次々と山地が切り崩され宅地造成され緑が少なくなっていく中で、貴重な一画です。このあたりの名主だった家で、今でも甘糟屋敷と呼ばれ、敷地面積は約3600平米とのことですから1000坪ぐらいですかね。甘糟家は室町時代からこの地の郷士であったといわれる古い家柄のようです。私たちがここにやってきた頃、老朽化していた長屋門がほぼ原型を残した形で再生され今日に至っていますが、その中の竹林や梅林も外から窺がい見るだけですが大いに憩いを与えられています。手入れもちゃんと行われているのでまだ財政的基盤は大丈夫のようですが、いつまでもこのままであり続けて欲しいなあ・・・と借景を満喫させてもらっている側からすればただ祈るだけなのです。
その緑(今はまだ紅葉していない)のクジラの尻尾の辺りからの尾根伝いの道は、この家の背後に当たる六国見山へと続いています。
夜になると左手の家々や駅近くのビル、信号機の点滅などの灯がきらきらとして、ここは山の中でもなく街中でもなく、まさに里なのだな、と思っています。
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