上橋奈穂子さんの奈穂子を奈緒子としてしまいました。ご指摘ありがとうございます。変換しただけで、見直さなかった私でした。ファンの方ごめんなさい。
今日の詩は昭和41年に発行された詩集からです。初めて読んだ日の衝撃は今でも忘れられません。無意識領域がひっかきまわされた感じでした。今でも鼻のあたりにじーんときます。
小柳玲子さんの第一詩集『見えているもの』の冒頭の詩です。
たびだち
小柳玲子
海があれて
舟はみんな遠かった
島はねむり
その果に夜がいくつも星を灯した
誰かたびに行ったと、私は思い
誰かたびに行ったと、話した
母は
すきとおった魚をやいた
父や妹に黒っぽい皿を並べた
みんな いるよ と答えた
だけど
海の声があんなにさびしいもの
誰かたびに行ったと 私は話した
昔 母が留守だと
海はあんな声でひびいた
犬が殺された朝もそうだった
みんな いるよ と母は言った
たびに行くのは
いつもお前の中の家族さ
海があれて
おもい夜更
家族とやさしい食事をおわると
遠い土地へたびだった私の
頼りない声をきいた
おやすみのあいさつを送るらしい
幼い声をきいたと思った
海があれて
母はおやすみと言った
(「ひびいた」の「び」が本文と同じものが打てませんでした)
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