ソワレイ

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     ソワレイ                                            木下夕爾(1914-1965)
      1
 罠にかかった獣のやうに
 夕暮は戸口に来て
 すわっている
 わらくづほどの光をつれて
 あ 乾草いろの月がのぼった
 少年たちは
 ハモニカのやうに
 たうもろこしの実をくはへて
 紫蘇畑の方へ出てゆく
      2
 ゆふぐれが来て美しい網をひろげる
 そして捕へる まだあそんでいる子供たちを
 エエテルのやうに 空気は軽くいい匂ひがする
 僕は木かげの石に腰かける
 それはさつきまで夏が抱いてあたためていた白い卵のようだ
 あたりにすずしい時間が立止る
 僕はおとなしい家畜の眼をする
 樹脂が流れる方へ向つて 僕の耳はひらかれる
 遠い沼がマグネシウムのやうに光つている・・・・・・
 この詩を読むと、どこかなつかしい気持ちにさせられてしまう。淡いものがゆるやかに流れていて、とても美しい。

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