神奈川新聞は日曜日毎に「旅人のうた」という見出し?で10行の詩を載せている。この「旅人のうた」は最近はじまったばかり、その前は「港」でその前は「食卓」だった。書き手は横浜詩人会の会員たち。20字10行という枠組みがいいのか悪いのか分からないが、読む側にたつとおもしろい。それぞれの展開の仕方や切り取る角度など、なかなか個性的。昨日の日曜日は水野るり子さんだった。こんな記憶があるなんてうらやましい。
バーモントの秋
水野るり子
ワッフルを見るとバーモントの秋がよみがえ
る。まぶたの裏に染み入る黄葉の木々をくぐ
り、おしゃれなペンションに着いた。エリオ
ットの詩集の置かれた暖炉…ふわふわのベッ
ド。詩の頁をめくるような夜だった。だが、
朝食は散文だった。客たちの流ちょうな英会
話が食卓を燕のように飛び交い、私の耳では
孤独な電線が風に鳴りつづけた。…でも、不
思議だ。今では思いきりアップにされた黄金
色のワッフルだけが記憶の皿に載っている。
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