公園ニ咲ク花

今日は「公園ニ咲ク花」を読んで、びっくりした。平林敏彦さんの『戦中戦後詩的時代の証言1935-1955』に引用されていたのだが、斬新な言葉の使いかたにかたまってしまった。戦後の社会風俗を書いたこの詩は1945年12月5日付神奈川新聞に掲載されたものである。当時の様子を平林さんはこのように書いている。「・・・入社した当時からぼくがやりたかったのは文化欄だった。はからずもそのきっかけになったのが、未知の読者からの投稿である。手作りのものらしい祖末な封筒に入れた原稿を開封したデスクが、さして興味もなさそうな顔でこういった。「平林君、こりゃきみの領域だな。詩だよ、意味はわからんが読んでみたらどう?判断はきみにまかせるから」、「へえ、詩ですかあ?」とぼくは失望させられることも予想して、はんぱな返事をした。それがハンパじゃなかったのである。」とある。敗戦のわずか3か月後である。当時の状況を考えれば、モダニズム的手法で書かれたものすごい詩(モダニズムがすごいということではなくて)が投稿されてきたということであろうが。そんな時代とは関係なくとても心惹かれている。たぶん読んだのは初めてではない(と思う)。それなのに今日なにしろ気になるのである。詩とは不思議ないきものである。
     公園ニ咲ク花
             富塚漢作(中島可一郎)
 公園ノ花々ハ冷タイ。
 初冬の霜ノさかづきクミホシ
 風ニ背中ヲ打タセテイル。
  ア チュウインガム
 唇ハびろうどノヤウニ濁リ。
 腕ハかはたれ色ニヒカッテイル。
  ア チョコレート。
 気マグレナ黒髪ノ噴水達。
 小熊ノヤウニ物慾シサウナ黒水晶。
  ア ドロップス。
 妙ナアクセントガ咲イタリ萎ンダリスル。
 勲章ノヤウニ胸ノ刺しうガ伸ビ縮ミスル。
  ア ラヴユー。
 公園ノ花々ハ冷タイ
 初冬ニはるノ附文モラヒ
 日向ニ目尻ヲ焦ガシテイル。
        *本文のイの表記は昔のイ
  

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