新年

 あけましておめでとうございます
元日は毎年、親戚ごちゃごちゃで過ぎてしまう。のんびりするのは二日から。箱根駅伝を見ながらうろうろといった感じだけど、今朝は訃報がとびこんできた。それほど近くにいた人ではないけど、昨日ふっと思い出していた。ほんとに一瞬だったけど。やはり寂しいものがある。今年は少しでも良い光がみえますように。
    新年      
            小柳玲子  
   ー昨秋、父を亡くした。元旦、墓参に立ち寄ったら結構楽しそうであった。安心した。
 「やあやあ、久しぶりだな。元気か?正月だ、おめでと
 う、おめでとう。幾つになった?」
 ー九十と十か月だよ、おまえ。ところでそっちは幾つに
 なった?
 「おれ?おれは二十さ。永遠のハタチだ」
 ーそうか、ハタチか。おまえはそのあたりで死んだもの
 な。永遠もへちまもない。あたりまえだ。いや、新年おめ
 でとう。
 「で、おまえの愛らしい奥方はどうした、元気か?」
 ー八十六だ。愛らしくない、梅ぼしばあさんだ。ぼけ
 ていて困る。去年は焚き火で百万円燃やして、手をあたた
 めた。
 「そうか。人間はみんなボケる。フリージアのようだった
 お嬢ちゃんたちは相変わらずかね?」
 ー一度もフリージアのようではなかった娘たちもみんな
 ばあさんになった。そのまた子どもたちもオヤジとオバン
 だ。
 「歳月は待ってくれない。仕方なし。おれは永遠のハタチ
 で・・・悪いな」
 ーハタチ、ハタチとうるさい奴だな。ところで正月から
 なにをしている、こんな所で。
 「そうだ、最近おまえのいとこのいとこが死んだという噂
 だ。おれは昔逢ったことがある奴なんで、迎えにきてやっ
 たんだ。結構ここも道が複雑なんだよ。おまえのいとこの
 いとこに逢わなかったか?」
 ーおれのいとこはおまえで、そのいとこはおれだ。簡単 
 なことをややこしくいうな。
 「そうか。おまえのいとこのいとこはおまえか。ずいぶん
 老けたな。九十と十か月か。老けても仕方ないか。おれは
 ハタチだ。悪いな。いやよくきてくれた。正月だ。まず
 はめでたいおめでとう、あけましておめでとう!」
         詩集『さんま夕焼け』から
   (ー昨秋 のところは小文字で二行書きだが、表示できなかった)

カテゴリー: 未分類 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です