蝶 西条八十 『美しき喪失』より
やがて地獄へ下(くだ)るとき
そこに待つ父母(ちちはは)や
友人に私(わたし)は何を持つて行こう。
たぶん私は懐(ふところ)から
蒼白(あおざ)め、破(やぶ)れた
蝶の死骸をとり出すだろう、
さうして渡しながら言ふだろう。
一生を
子供のやうに、さみしく
これを追っていました、と。 (本文の「い」は旧かな)
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