映画「TROY」はホメロスの「iliad」イリアスと

映画「TROY」はホメロスの「iliad」イリアスとあまりに違いすぎるとアメリカの批評家らが
物議を醸し出した。しかし、映画は映画で私は面白いと思う。なぜなら、原作はあまりに
神々と人間が複雑にからみあっていて、とうてい映像にはなりにくいし、また説明もできない
からである。
だいたい、どこから、はなしたらいいのかわからない。
イリアスとは、トロイのこと。いまではトルコにある。アキレスは半身神で半身人間の英雄。母はティテス
は海の女神とペレーウスの息子。最後にパリスに弓でアキレス腱を切られて死ぬが、ティテスがスティス川に足をつかんで浸し神々のように不死身の体にするが、アキレス腱だけつかんで逆さにに川にひたしたのでその部分だけは不死身にならなかったので人間とおなじように死ぬので、悲しいのである。
パリスはヘクトールの弟でトロイの王家に生まれるが、母の夢みが悪かったため、羊かいに育てられる。テテイスとペレーウスの結婚式は神々からも盛大に祝福をうけるが、ひとり争いの神エリスだけよばなかったので、エリスは怒っていちばん美しい女は誰かといい、金の林檎を放り込む。ゼウスは羊飼いのパリスに審判させることにする。アテネー、ヘラー、アフロディテーの内、いちばん美しい女を与えると約束
したアフロディテーがいちばん美しいとハリスは審判する。これがもとになり、Troy戦争がはじまるのである。パリスはメネラオゥスの妻をスパルタから略奪してくる。これをアフロデイテーが助ける。メネラーオスはアガメムノンの弟でヘレンを取り戻すために戦争を起こす。どの映画でもヘレンと名の付く女は美しいに決まっているので、観客を満足させなければならないのだ。美しい女はなんにもしなくても唯眺めて
いるだけていいので、いいなあと思う。ただこの女のために男たちが血で血を争う戦争をするのはいかにも古代だとおもう。いまなら、石油とか共産党とか革命とかコロニーとかいろいろですけれど。
パリスはアキレウスを殺すが、最後にヘラクレイトスの弓を持つピクロテーテースに射られて瀕死の重傷を負うが、前の妻オイノーネーに助けてくれるように頼むが断られ死ぬ。
ヘクトールは家族を大事にするやさしい男だが、アキレウスの親友パトロクロスを殺したため、アキレスの恨みを買って殺される。戦いが終わっててもよるじゅうヘクトールの遺骸をひきづりまわし、ヘクトールの父親プリアモスに請われて遺骸を引き渡す。
こうして、トロイ戦争はアキレウスもヘクトールもパリスも死ぬのである。その他のおびただしい兵士たちも死に、イリアスの中はこの戦争で死ぬ人々の描写以外には何もない。「平家物語」の悲しいが「イリアス」はもっと虚しい。二十歳の頃私が読んだ本はイリアスだった。なんでも、覚えているのは、アキレス
が海に向かって、まるで幼い子が母に訴えかけるように、駄々をこねるところが微妙に悲しかった。
どうしてあんなに立派な英雄がお母さんに小さい子供のように駄々をこねるのだろうと思っていたら、
アキレウスは小さい頃母に育てられた訳ではなかったので、大きくなってもいつまでも寂しさが残っているからだと何かの本に書いてあった。それから、ヘクトールの妻アンドロマッケは夫に戦場に行かないように懇願するのも、ギリシャ時代から女たちはこうだったのだと思い、何千年立っても変わらないものは
変わらないのだなあと思ったことだった。

続きを読む

カテゴリー: めちやくちやに | コメントする

Achillies & Briseis Paris & Helen Hector & Andromache

カテゴリー: 未分類 | Achillies & Briseis Paris & Helen Hector & Andromache はコメントを受け付けていません

iliad

music:Wolfgang Amadeus Mozart, The Magic Flute – overture

カテゴリー: 未分類 | コメントする

ハイデッカーが読むヘルダーリンの「イスター」浅井真男訳

Friedrich Hölderlin
Der Ister
Jetzt komme, Feuer!
Begierig sind wir,
Zu schauen den Tag,
Und wenn die Prüfung
Ist durch die Knie gegangen,
Mag einer spüren das Waldgeschrei.
Wir singen aber vom Indus her
Fernangekommen und
Vom Alpheus, lange haben
Das Schickliche wir gesucht,
Nicht ohne Schwingen mag
Zum Nächsten einer greifen
Geradezu
Und kommen auf die andere Seite.
Hier aber wollen wir bauen.
Denn Ströme machen urbar
Das Land. Wenn nämlich Kräuter wachsen
Und an denselben gehn
Im Sommer zu trinken die Tiere,
So gehn auch Menschen daran.
Man nennet aber diesen den Ister.
Schön wohnt er. Es brennet der Säulen Laub,
Und reget sich. Wild stehn
Sie aufgerichtet, untereinander; darob
Ein zweites Maß, springt vor
Von Felsen das Dach. So wundert
Mich nicht, daß er
Den Herkules zu Gaste geladen,
Fernglänzend, am Olympos drunten,
Da der, sich Schatten zu suchen
Vom heißen Isthmos kam,
Denn voll des Mutes waren
Daselbst sie, es bedarf aber, der Geister wegen,
Der Kühlung auch. Darum zog jener lieber
An die Wasserquellen hieher und gelben Ufer,
Hoch duftend oben, und schwarz
Vom Fichtenwald, wo in den Tiefen
Ein Jäger gern lustwandelt
Mittags, und Wachstum hörbar ist
An harzigen Bäumen des Isters,
Der scheinet aber fast
Rückwärts zu gehen und
Ich mein, er müsse kommen
Von Osten.
Vieles wäre
Zu sagen davon. Und warum hängt er
An den Bergen grad? Der andre,
Der Rhein, ist seitwärts
Hinweggegangen. Umsonst nicht gehn
Im Trocknen die Ströme. Aber wie? Ein Zeichen braucht es,
Nichts anderes, schlecht und recht, damit es Sonn
Und Mond trag im Gemüt, untrennbar,
Und fortgeh, Tag und Nacht auch, und
Die Himmlischen warm sich fühlen aneinander.
Darum sind jene auch
Die Freude des Höchsten. Denn wie käm er
Herunter? Und wie Hertha grün,
Sind sie die Kinder des Himmels. Aber allzugeduldig
Scheint der mir, nicht
Freier, und fast zu spotten. Nämlich wenn
Angehen soll der Tag
In der Jugend, wo er zu wachsen
Anfängt, es treibet ein anderer da
Hoch schon die Pracht, und Füllen gleich
In den Zaum knirscht er, und weithin hören
Das Treiben die Lüfte,
Ist der zufrieden;
Es brauchet aber Stiche der Fels
Und Furchen die Erd,
Unwirtbar wär es, ohne Weile;
Was aber jener tuet, der Strom,
weiß niemand.
イスター  フリードリッヒ・ヘルダーリン 浅井真男訳
いまこそ来たれ、火よ!
われらこがれる思いで
日を見るのを待っている、
まことに、試練が
ひざまづく者にとって過ぎれば、
彼は森の叫びに気づくであろう。
けれどもわれらは、インダス河から、
アルプェイオスを通ってはるばると
やって来たものを歌う。長いあいだ
われらはふさわしいものを探し求めたのだ、
いささかの飛躍をもって
身近なものにまっすぐに
手をのばし、反対がわにおもむく者もあろう。
しかしわれらはここで土をたがやそう。
あまたの川が土地を耕地に
してくれるからだ。なぜなら、雑草がはびこり、
夏に水を飲もうとして、けものが
川のほとりにゆくならば、
人間もまた仕事をはじめるのだから。
だがこの川をひとはイスターと呼ぶ。
この川はうるわしく土地になじんでいる。円柱をなす樹々の葉は熟し、
ざわめいている。樹々は野生のままに
入り乱れて立っている。その上には
樹々とはちがう高度を保って、岩々の
屋根がそびえている。これを見れば、
この川がヘラクレスを客として
迎えたことも、わたしを驚かさない。
遠くまで輝きをとどかせて、この川は
彼が炎暑のイストモスから影を求めて来たときに、
あの南方のオリュンポス山のほとりで、彼をさそったのだ。
なぜならば、そこでもひとびとは活気に満ちていたのだが、
死者たちの霊のためにはやはり
冷気が必要だったのだ。だからこそ彼は好んで
ここの泉と黄色い岸辺まで足をのばしたのだ。
ここでは高いところでは強い香りがただよい、
猟人が好んでさすらう谷間は
真昼にも唐檜の森におおわれて暗く、
イスターの樹脂の多い樹々からは
その成長の音が聞き取れるのだ。
ところがイスターは引っ返してゆくように見え、
わたしには、この川が
東方から来たとしてか思えない。
これについては
あまたのことが言えるだろう。そしてこの川は、なぜ
山々にまといついているのだろう、もうひとつの川、
ラインはわきによけて
流れ去っていったのに。あまたの川が
乾燥地帯を流れるのもあだではない。だが、どうしてか?太陽と月とを、
また日と夜とを、心情のなかに
分かちがたく保持して、運び、
天上的なものたちが温くたがいを感じあうための
しるしこそは、ぜひとも必要だからなのだ。
だからこそ、あのあまたの川はまた
最高者の喜びなのだ。 どうして最高者は
地上におりてこられよう?そしてヘルタが緑であるように、
川はみな天空の子らなのだ。だがイスターはわたしには
あまりに忍耐づよく、
殆ど見る者をあざけるほどに、自由でないように見える。すなわち、
日は、生長しはじめる
青春のときに昇らなくてはならず、
もうひとつの川は青春のおりに
早くも高々と壮麗な活動を示し、若駒にひとしく、
埒のなかで荒れ狂い、遙か遠くの風も
その狂乱を聞くのに、
イスターは満足しているのだ。
けれども岩には通路が
大地には鋤溝が必要なので、
もし停滞がなかったら、川は荒廖たるものになるだろう。
だが、あの川のなすことは、
だれも知らない。

イスターはドナウ川のこと。
ヘラクレスは極北人ヒュペルポレオイの国、もしくは西のはての国スペロスへ行ったともされるが、いずれの国も生の彼岸という意味を持っている。
イストモスはコリント地域のこと。
イスターはSalzburgあたりから、10の国を通過して、黒海に入る。
ラインは反対の大西洋に出る。
一時ヘルダーリンはすたれたが、最近またフランスで興味を持たれている。
2002 – 2008 © Ister.ORG

カテゴリー: something blue | コメントする

こんな詩が書きたかった!

Rilke ゛ Das Buch der Bilder ゜ eingang
Wer du auch seist: am Abend tritt hinaus
aus deiner Stube, drin du alles weißt;
als letztes vor der Ferne liegt dein Haus:
wer du auch seist.
Mit deinen Augen, welche müde kaum
von der verbrauchten Schwelle sich befrein,
hebst du ganz langsam einen schwarzen Baum
und stellst ihn vor den Himmel: schlank, allein.
Und hast die Welt gemacht. Und sie ist groß
und wie ein Wort, das noch im Schweigen reift.
Und wie dein Wille ihren Sinn begreift,
lassen sie deine Augen zärtlich los…
リルケ  「形象詩集」  序詩 富士川英郎訳
君がどんな人でもいい 夕(ゆうべ)がきたら
知りつくした部屋から出てみたまえ
君の住居(すまい)は 遠景の前に立つ最後の家に変わっている
君がどんな人でもいい
踏み減らした敷居から ほとんど離れようとせぬ
疲れた眼で
おもむろに君は一本の黒い木を高め
それを大空の前に立たせる ほっそりと孤独に
こうして君は世界を造った その世界は大きく
沈黙のうちにみのることばのようだ
そして君の意志が その意味をつかむにつれて
君の眼は やさしくその世界を放す……
この詩はyou tube にないので、発音がわかりません。でも、電子辞書に豆電池をいれたので、
すこし単語がわかりました。
welt ヴェルト 世界
gemacht ゲマはト 造られた
wer ヴェーア 誰
Abend アーベント 日暮れ時
 この四つがわかれば、今日はいいでしよう。
 リルケはやがて「世界ー内ー存在」ということをいうようになります。
 この頃はまだ、世界はそんなに壊れていなかったのでしょう。いまは、世界という観念もすこし変わっているかも、知れません。壊れた世界の穴を埋めながら、世界を造るのは容易ではありません。
 でも、この詩の魅力はそれとは別にあるようです。何かが可能だと思わせるのです。

カテゴリー: something blue | コメントする

エミリーディキンソンの「わたしは死のために…」亀井俊介訳

Because I could not stop for Death (712)
by Emily Dickinson
Because I could not stop for Death –
He kindly stopped for me –
The Carriage held but just Ourselves –
And Immortality.
We slowly drove – He knew no haste
And I had put away
My labor and my leisure too,
For His Civility –
We passed the School, where Children strove ( played at wresting)
At Recess – in the Ring –
We passed the Fields of Gazing Grain –
We passed the Setting Sun –
(Or rather – He passed us –
The Dews drew quivering and chill –
For only Gossamer, my Gown –
My Tippet – only Tulle – )
We paused before a House that seemed
A Swelling of the Ground –
The Roof was scarcely visible –
The Cornice – in the Ground –( The cornice but a mound.)
Since then – ‘tis Centuries – and yet (Since then ’t is centuries; but each)
Feels shorter than the Day
I first surmised the Horses’ Heads
Were toward Eternity –
わたしは「死」のために止まれなかったので―― エミリー・ディキンソン 亀井俊介訳
わたしは「死」ために止まれなかったので――
「死」がやさしくわたしのために止まってくれた――
馬車に乗っているのはただわたしたち――
それと「不滅の生」だけだった。
わたしたちはゆっくり進んだ――彼は急ぐことを知らないし
わたしはもう放棄していた
この世の仕事も余暇もまた、
彼の親切にこたえるために――
わたしたちは学校を過ぎた、子供たちが
休み時間に遊んでいた――輪になって――
目を見張っている穀物の畠を過ぎた――
沈んでゆく太陽を過ぎた――
(いやむしろ――太陽がわたしたちを過ぎた――
露が降りて震えと冷えを引き寄せた――
わたしのガウンは、蜘蛛の糸織り――
わたしのショールは――薄絹にすぎぬので――)
わたしたちは止まった
地面が盛り上がったような家の前に――
屋根はほとんど見えない――
蛇腹は――土の中――
それから――何世紀もたつ――でもしかし
あの日よりも短く感じる
馬は「永遠」に向かっているのだと
最初にわたしが思ったあの一日よりも――

カテゴリー: something blue | 1件のコメント

リルケの愛の歌 富士川英郎訳

Liebes-Lied
Wie soll ich meine Seele halten, daß
sie nicht an deine rührt? Wie soll ich sie
hinheben über dich zu andern Dingen?
Ach gerne möcht ich sie bei irgendwas
Verlorenem im Dunkel unterbringen
an einer fremden stillen Stelle, die
nicht weiterschwingt, wenn deine Tiefen schwingen.
Doch alles, was uns anrührt, dich und mich,
nimmt uns zusammen wie ein Bogenstrich,
der aus zwei Saiten eine Stimme zieht.
Auf welches Instrument sind wir gespannt?
Und welcher Geiger hat uns in der Hand?
O süßes Lied.wutz
愛の歌   ライナー・マリア・リルケ  富士川英郎訳
お前の魂に 私の魂が触れないように
私はどうそれを支えよう? どうそれを
お前を超えて他のものに高めよう?
ああ 私はそれを暗闇の なにか失われたものの側にしまつて置きたい
お前の深い心がゆらいでも ゆるがない
或る見知らぬ 静かな場所に。
けれども お前と私に触れるすべてのものは
私たちを合わせるのだ 二本の紘から
一つの声を引きだすヴァイオリンの弓の摩擦のように。
では どんな楽器のうえに 私たちは張られているのか?
そしてその手に私たちを持つ それはどんな弾き手であろう?
ああ 甘い歌よ

カテゴリー: something blue | コメントする

Shakespeare in Love

カテゴリー: めちやくちやに | コメントする

ランボーの酔っぱらった船 宇佐美斉訳

酔っぱらった船 アルチュール・ランボー 宇佐美斉訳
平然として流れる大河を下っていくほどに
船曳きに導かれる覚えはもはやなくなった
甲高く叫ぶインディアンが色とりどりの柱に
彼らを裸のまま釘づけにして弓矢の標的にしてしまった
フランドルの小麦やイギリスの綿花を運ぶ船である私は
あらゆる乗組員どものことにもはや無頓着だった
船曳きがいなくなるのと同時にあの喧噪も収まってしまい
大河は私の望むままに流れを下りゆかせた
たけり狂う喧噪のなかを ある年の冬のこと
子供の脳髄よりも聞き分けのない私は
疾走した 纜をとかれた半島といえども
これほど勝ち誇った大混乱に身を委せはしなかった
嵐が海上での私の目覚めを祝福した
コルク栓より軽々と波の上で私は踊った
遭難者を永遠に転がし続ける者と呼ばれるその波の上で
十夜にわたって 角灯のまぬけた眼を惜しむこともなく
子供らが囓る酢っぱい林檎よりもなお甘い
海の蒼い水は 樅材の私の船体にしみとおって
安物の赤葡萄酒と反吐のしみを洗い流してくれ
梶と錨までももぎ取ってどこかへやってしまった
そしてその時から 私は身を浸したのだ 星を注がれ
乳色に輝いて 蒼空を貪り喰っている海の詩のなかに
そこでは時折 色蒼ざめて恍惚とした浮遊物
物思わしげな水死人が 下ってゆくのだつた
またそこでは 蒼海岸がいきなり染めあげられて
太陽の紅の輝きのもとで錯乱し かつゆるやかに身を揺すり
アルコールよりもなお強く また私たちの竪琴の音よりもなお広大に
愛欲の苦い赤茶色の輝きが 醗酵するのた゜った
私は知っている 稲妻に切り裂かれる空 そして竜巻
砕け散る波と潮の流れを 私は知っている 夕暮れを
一群の鳩のように高揚して舞い上がる暁を
そして私は時折まさかと思われるようなことをこの眼で見た
私は見た 神秘の恐怖にしみをつけられた低い太陽が
菫いろの長い凝固の連なりを照らしているのを
そしてまた古代史を彩る立役者たちのように
大波がはるか遠くで鎧戸の戦きを転がしているのを
私は夢に見た 眩惑された雪が舞う緑の夜
すなわちゆるやかに海の瞳へと湧き上がる接吻を
驚くべき精気の循環を
そして歌う燐光が黄と青に目覚めるのを
私は従った 何箇月もの間 ヒステリーの牛の群れさながらに
暗礁へと襲いかかる大波の後を追って
その時は マリアさまのまばゆい素足が 喘ぐ太陽の鼻面を
押さえつけることができるとは思いもしなかった
私は衝突した 本当に まさかと思ったフロリダ
人間の膚をした豹の眼に花々がまぜ合わされるあの国に
そしてまた 水平線の下へと 海緑色の野獣の群れに
手綱のように張り渡された虹にさえ衝突した
私は見た 巨大な沼が魚梁となって醗酵し
蘭草のなかに怪獣レヴィアタンがまるごと腐乱しているのを
べた凪のただなかで海水が崩れ落ちるのを
そしてはるかな遠景が滝となって深遠へと雪崩れてゆくのを
氷河 銀の太陽 真珠の波 熾火の空よ
褐色の入江の奥で味わったおぞましい座礁の体験
そこでは南京虫に貪り喰われた大蛇が
猛烈な臭いを放ってねじくれた木からずり落ちてくる
子供たちに見せてやりたかった 青い浪間の鯛や
金の魚 そしてあの歌うたう魚らを
――泡沫の花々が私の漂流やさしく揺すり
絵も言われない追風が時々私に翼をあたえた
時折 海はすすり泣いて私の横揺れを甘美なものにしながら
極地や様々な地帯に倦み疲れた殉教者である私に向かって
黄いろい吸玉のついた影の花々をさし出すのだった
そこで私はじっとしていた 跪くひとりの女のように……
まるで島だった 私が揺すっている船べりには
ブロンドの眼をした口うるさい鳥たちが争いをしたり糞をおとしたりしていた
そしてなおも後悔を続けていると か細くなって垂れ下がった私の纜を横切って
水死人らが後ずさりしながら眠りに落ちてゆくのだった
ところでこの私は入江の髪のなかに迷い込んでしまって
鳥も住まない天空へハリケーンによって吸い上げられた船だった
モニター艦やハンザの帆船といえどども
水に酔っぱらったこの骨組みを救いあげようとはしなかったろう
自由気まま 菫色の霞に跨がられ 煙を吐きながら
私は赤く染まった壁のような空に風穴をあけていた
そこにはお人好しの詩人にとって甘美なジャムである
太陽に彩られた苔と蒼空の鼻汁とがこびりついている
私はさらに走りつづけた 三日月模様の電光に染まって
黒い海馬ヒッポカムポスに伴われる狂い船となって
その頃 七月は 沸騰する漏斗をそなえた群青色の空を
棍棒の乱打でくずおれさせていた
私はみぶるいしていた 五十マイルも離れたところで
発情した怪獣ペへモットやメールストロームの大渦潮が唸るのを感知して
青い不動の海原を永遠に糸を紡いで渡る身のこの私は
古い胸壁に取り囲まれたヨーロッパを懐かしんでいる
私は見た 星の群島を そして航海者に
錯乱に陥った空を開示する島々を
――おまえは眠りそして隠れ住むのか あの底の知れない夜のうちに
無数の金の鳥たちよ 未来の生気よ
それにしても 私はあまりに泣きすぎた 暁は胸をえぐり
月はすべて耐えがたく 太陽もま例外なく苦い
刺激のきつい愛が私の全身を陶酔のうちに麻痺させた
おお 竜骨よ砕け去れ 海にこの身を沈めるのだ
私が渇望するヨーロッパの水があるとするならば
それは黒々とした冷たい森の水たまりだ そこではかぐわしい匂いのする夕暮れに
悲しみに胸をあふれさせてうずくまるひとりの少年が
五月の蝶さながらのたおやかな小舟をそっと放ちやるのだ
おお波よ おまえの倦怠に浴してしまった私には
もはや不可能だ 綿花のを運ぶ船の航跡を消してゆくことも
旗や吹流しの驕慢を横切ることも そしてまた
廃船の恐ろしい眼をかいくぐって航行つづけることも
Le Bateau ivre
Comme je descendais des Fleuves impassibles,
Je ne me sentis plus guidé par les haleurs :
Des Peaux-Rouges criards les avaient pris pour cibles
Les ayant cloués nus aux poteaux de couleurs.
J’étais insoucieux de tous les équipages,
Porteur de blés flamands ou de cotons anglais.
Quand avec mes haleurs ont fini ces tapages
Les Fleuves m’ont laissé descendre où je voulais.
Dans les clapotements furieux des marées
Moi l’autre hiver plus sourd que les cerveaux d’enfants,
Je courus ! Et les Péninsules démarrées
N’ont pas subi tohu-bohus plus triomphants.
La tempête a béni mes éveils maritimes.
Plus léger qu’un bouchon j’ai dansé sur les flots
Qu’on appelle rouleurs éternels de victimes,
Dix nuits, sans regretter l’oeil niais des falots !
Plus douce qu’aux enfants la chair des pommes sures,
L’eau verte pénétra ma coque de sapin
Et des taches de vins bleus et des vomissures
Me lava, dispersant gouvernail et grappin
Et dès lors, je me suis baigné dans le Poème
De la Mer, infusé d’astres, et lactescent,
Dévorant les azurs verts ; où, flottaison blême
Et ravie, un noyé pensif parfois descend ;
Où, teignant tout à coup les bleuités, délires
Et rythmes lents sous les rutilements du jour,
Plus fortes que l’alcool, plus vastes que nos lyres,
Fermentent les rousseurs amères de l’amour !
Je sais les cieux crevant en éclairs, et les trombes
Et les ressacs et les courants : Je sais le soir,
L’aube exaltée ainsi qu’un peuple de colombes,
Et j’ai vu quelque fois ce que l’homme a cru voir !
J’ai vu le soleil bas, taché d’horreurs mystiques,
Illuminant de longs figements violets,
Pareils à des acteurs de drames très-antiques
Les flots roulant au loin leurs frissons de volets !
J’ai rêvé la nuit verte aux neiges éblouies,
Baiser montant aux yeux des mers avec lenteurs,
La circulation des sèves inouïes,
Et l’éveil jaune et bleu des phosphores chanteurs !
J’ai suivi, des mois pleins, pareille aux vacheries
Hystériques, la houle à l’assaut des récifs,
Sans songer que les pieds lumineux des Maries
Pussent forcer le mufle aux Océans poussifs !
J’ai heurté, savez-vous, d’incroyables Florides
Mêlant aux fleurs des yeux de panthères à peaux
D’hommes ! Des arcs-en-ciel tendus comme des brides
Sous l’horizon des mers, à de glauques troupeaux !
J’ai vu fermenter les marais énormes, nasses
Où pourrit dans les joncs tout un Léviathan !
Des écroulement d’eau au milieu des bonaces,
Et les lointains vers les gouffres cataractant !
Glaciers, soleils d’argent, flots nacreux, cieux de braises !
Échouages hideux au fond des golfes bruns
Où les serpents géants dévorés de punaises
Choient, des arbres tordus, avec de noirs parfums !
J’aurais voulu montrer aux enfants ces dorades
Du flot bleu, ces poissons d’or, ces poissons chantants.
– Des écumes de fleurs ont bercé mes dérades
Et d’ineffables vents m’ont ailé par instants.
Parfois, martyr lassé des pôles et des zones,
La mer dont le sanglot faisait mon roulis doux
Montait vers moi ses fleurs d’ombres aux ventouses jaunes
Et je restais, ainsi qu’une femme à genoux…
Presque île, balottant sur mes bords les querelles
Et les fientes d’oiseaux clabaudeurs aux yeux blonds
Et je voguais, lorsqu’à travers mes liens frêles
Des noyés descendaient dormir, à reculons !
Or moi, bateau perdu sous les cheveux des anses,
Jeté par l’ouragan dans l’éther sans oiseau,
Moi dont les Monitors et les voiliers des Hanses
N’auraient pas repêché la carcasse ivre d’eau ;
Libre, fumant, monté de brumes violettes,
Moi qui trouais le ciel rougeoyant comme un mur
Qui porte, confiture exquise aux bons poètes,
Des lichens de soleil et des morves d’azur,
Qui courais, taché de lunules électriques,
Planche folle, escorté des hippocampes noirs,
Quand les juillets faisaient crouler à coups de triques
Les cieux ultramarins aux ardents entonnoirs ;
Moi qui tremblais, sentant geindre à cinquante lieues
Le rut des Béhémots et les Maelstroms épais,
Fileur éternel des immobilités bleues,
Je regrette l’Europe aux anciens parapets !
J’ai vu des archipels sidéraux ! et des îles
Dont les cieux délirants sont ouverts au vogueur :
– Est-ce en ces nuits sans fond que tu dors et t’exiles,
Million d’oiseaux d’or, ô future Vigueur ? –
Mais, vrai, j’ai trop pleuré ! Les Aubes sont navrantes.
Toute lune est atroce et tout soleil amer :
L’âcre amour m’a gonflé de torpeurs enivrantes.
Ô que ma quille éclate ! Ô que j’aille à la mer !
Si je désire une eau d’Europe, c’est la flache
Noire et froide où vers le crépuscule embaumé
Un enfant accroupi plein de tristesses, lâche
Un bateau frêle comme un papillon de mai.
Je ne puis plus, baigné de vos langueurs, ô lames,
Enlever leur sillage aux porteurs de cotons,
Ni traverser l’orgueil des drapeaux et des flammes,
Ni nager sous les yeux horribles des pontons.

カテゴリー: something blue | ランボーの酔っぱらった船 宇佐美斉訳 はコメントを受け付けていません

ヘルマン・ヘッセの霧の中 高橋健二訳

Im Nebel
Seltsam, im Nebel zu wandern!
Einsam ist jeder Busch und Stein,
Kein Baum sieht den anderen,
Jeder ist allein.
Voll von Freunden war mir die Welt,
Als noch mein Leben licht war;
Nun, da der Nebel fällt,
Ist keiner mehr sichtbar.
Wahrlich, keiner ist weise,
Der nicht das Dunkel kennt,
Das unentrinnbar und leise
Von allem ihn trennt.
Seltsam, im Nebel zu wandern!
Leben ist Einsamsein.
Kein Mensch kennt den andern,
Jeder ist allein.
 霧の中  
ヘルマン・ヘッセ詩 高橋健二訳  
不思議だ、霧の中を歩くのは!
どの茂みも石も孤独だ、
どの木にも他の木は見えない。
みんなひとりぽっちだ。
私の生活がまだ明るかったころ、
私にとって世界は友だちにあふれていた。
いま、霧がおりると、
だれももう見えない。
ほんとうに、自分をすべてのものから
逆らいようもなく、そっとへだてる
暗さを知らないものは、
賢くはないのだ。
不思議だ、霧の中を歩くのは!
人生(いきる)とは孤独であることだ。
だれも他の人を知らない。
みんなひとりぽっちだ。
 

カテゴリー: 未分類 | 2件のコメント