このところ、ある雑誌の編集をしているのだが、それはなにかしら、わたしをかーるい興奮にさそってくれる。締め切りがあると、どうしても、続々と編集部からパソコンの添付つきのメールでおくられてくる。
一人、5篇の詩とエッセイ一篇なので、印刷機にかけるとA4が4枚になるわけだが、この4枚を読んでいくのはまだばらばらの気分でよみにくいので、A3にコピーしにいく。そうしてほっちきすでとめ、何度も何度も詩をよんでいく。それからエッセイも読んでいく。すると、深夜に海底に網をかけ、そっと網を引き上げるときのような、どきどきするような喜びがある。よく名前も知らないようなひとが書いた詩、ずっしりと海底を何百年も泳いでいた魚なのか、宝石なのか、廃船なのか、わからないきらきらしたものが急にひきあげられてきて、目の前にあると、怖いような感動が伝わってくることがある。それらの詩はもし、詩集のなかに納められていたら、決してわたしは探すことができなかったであろう。それはすこしごつごつして、詩としては形があまりよくないかもしれないし、第一エッセイかもしれないと思うくらいだ。しかし、それはまぎれもなく詩であり、本人もよくそのことがわかっているようだ。しかし、わずかだけれど、詩はちゃんとあったのだ。特殊な語り口ではあったが、私でなくても世界中の人々がよくわかる普遍性を持っていて、そして、もしわたしが発見しなければだれが発見するのだろうと思われる偶然性に満ちている。そして、幾人かのひとに読まれたその詩は一晩たってまた読み直すといっそう真実で輝きを増しているように思える。
もし、現在の詩を、その価値をあじわってみたいとおもったら、詩の雑誌を編集してみるのが一番いいと思う。
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