この物語がどうして、こんなに心を揺さぶられるのか、私は2000年に「朗読者」という8刷目の本を読みました。何回も読み、はじめの恋愛の文章は大変わかりやすいので、私たちの詩のグループAUBEで読もうと思ったのです。「罪と罰」ほどではありませんが、私の好きな小説の十のゆびの入ると思ったからです。それにAUBEはそれこそ朗読者たちのグループだったからです。私はドイツ語版の本も買いました。
しかし、ドイツ語版の朗読テープはなかったのです。でも、英語の本と英語版のテープ
はあったのです。いまでも、それをわたしは持っています。でも、その後、すぐ安く
パウル・ツェランの詩人本人が読んでいる録音テープを見つけたのです。それでそちら
を聞いたり読んだり評論を読んだりし始めたのです。それは大きな大きな私たちの収穫でした。
それで、私はこの本のことをすっかり忘れていました。しかし、さすがにドイツの悲劇について、世界中の人が感じたり、考えたりしているものですから、この本はたちまちベストセラーになり、そして皆が心をゆさぶられていったのです。私の今度の大きな発見は
2000年と2009年では私の年齢が違っているので、主人公のHannahやMichaelとおなじように年をとったので、恋愛だけでなく、人間の罪や悲しみや戦争について
考えさせられることが多かったです。おどろいたことにこの作者ベルンハルト・シュリンクは1944年生まれで、私より三つも年したでした。少し通俗的ですけれど、現れるべくして現れた小説だと思いました。何よりも、直接戦争には行かなかったのに、ナチズムという大変重いもののをもろにかぶった世代だったのです。例え心に重く、恐らく
ユダヤ人もドイツ人も全世界の人々がどんなにこころに重くのしかかっていたとしても、単純に思想的にだけこの問題を処理するだけでは、いろいろな世代の人達にこうは
うまく伝わらなかったでしょう。しかし、恋愛というひとの一生に直接深くかかわり
あう出来事から、掘り起こしたため、映画をみたり、本を読んだりする人が抜き差しならぬところまでひきづられてしまうのです。
私はもう半月もこの本を読んで、少しおかしくなったりしました。
アドルノの「アウシュビッツの後、詩を書くことができるか?」にパウル・ツェラン
も、小説ですが、ベルハルド・シュリンクも必死に答えていると思います。特にこの本はニュンベルグ裁判以後、1963.12~1965.8まで初めてドイツ人がドイツ人を裁く裁判
が行われたそのことを小説にしているので、何かみにつまされるのです。ハンナは裁判
長に「あなたならどうしますか?」と叫ぶのです。あの悲痛な声は全世界のひとにひびいたと思います。つづく
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