「ここにいるよ」川又郁子

ここにいるよ  川又郁子
わたしはここにいるよ
内なる夢をひめて
誰も知らない
名もないひとは
声にならない声で
ここにいるよ
生きとし生きた軌跡を編んでいる
風やあめの日も
わたしはここにいるよ
そこやここ
界隈に名を知られるひとたちのなか
ほそぼそと生きてきたひとを
ひとり認めることは
悲しいことに違いないが
わたしはここにいるよ
こころの雑草を抜きながら
夏草にはさせまいと
季節のなか
足を向けるのはどこへ
わたしはここにいるよ
誰も知らない
名もないひとは
音にならない音で
ここにいるよ
きみのそばで
この星の美しい
地球にしがみついているよ
                     ※
 ああ、なんて感動的なんでしょう。日本は人口が多いから、誰だってこんなふうに思って生きているのでしょう。ああ、わたしもこころの雑草を抜かなけれゃと思うのです。でも、なかなか土性骨がすわったいい詩だと思うのです。

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