和田まさ子「ひとになる」変身の願望

ひとになる   和田まさ子

夜のうちに
豹になっているわたし
黒い斑点の美しい模様の体で
アフリカの大地をかけめぐり
肉をひきちぎって食べていた
そのスピードがゆるゆる落ちて
朝がきた
服を着替え
パンとサラダを食べ
化粧をし 口紅をひいて
鏡をのぞき込む
ひとらしく見えるだろうか
豹のまなざしになつていないか
飢えた心が見透かされるはしないか
バス停で待っていると
待っているのは
バスなのか
餌食となる動物なのか
判然としない
まだ、眠りと現実のあわいにいるようだ
二月の晴れた日にアフリカではなくて
ここにいる不思議にとどまっている
あそこにもひとり
夜、なにかになっていた女性がいる
懸命にひとになろうと努力しているのがわかる
ひとになるのがいちばんむずかしい

 フランツカフカは重要な作家の一人で、その作品の中手も「変身」は何度も詠みましたが、その度に新たな興味がわいてきました。この小説のテーマは歴史や社会によってもたらされる個人の疎外
、否定といつてもいいと思いますが、私の心に残っているのは「変身」した青虫に対する自分自身の
親近感というか、いとおしさです。
そのことから、私は思うのですが、「変身」は私の一つの願望であり、「究極の逃げ手」ではないのかと思いますが、この詩を読んでますます、得心を得たような気がしました。

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