「はじめての海」丸山由美子

「はじめての海」     丸山由美子
一度だけ
海に連れて行ってもらつたことがある
開けっ放しの列車の窓から見えた松林まで
フライパンのような道を
みんなでもう一度
うす焼きたまごになってひき返した
潮の満ち始めた海はきらきらと
ずうっと遠くまで水着を着たおとなやこどもがいて
どうしてだか突然 ぽつんと
私の家は七人家族なのだと思った
それから父や母を大好きだと思った
それから満潮の海はギラギラと傾き
どこまでも広がって 高く高く
広がって
夕方近く私の手や足がおとなしくなって
もうそろそろ海の家から帰る気分で
最後にかきごおりを食べた
さし向かいのテーブルのもも色のお山のてっぺんから
耳のすこし遠い末のおとうとの
らっきょうのような顔が笑っている
もっとその他に留守番をしている祖母も
音のない潮風が吹く中で
みんなでしつかりと
雲と雲とのようにくっつき合って食べていた
 
 
 
 何という何という詩なのでしょう!
 丸山由美子さんはわたしと二つしか年が違わないので、ちょうど戦争が終わったばかりで家族で
海にいくなどということは大変幸せな事件だったということがわかります。ただそれだけで幸せだったのです。幸いなことに誰も戦争に行って死んだ人がいないということも大変な幸運だったのです。
 ところが、アメリカではクリントン大統領の頃、子どもはもう親より豊かな生活ができないということが分かって
あまり幸せではなくなったそうです。その頃、アメリカにいっていた日本人はアメリカとは大変な国だなと感じたそうです。でも、日本がいまちょうどそうなつたそうです。ニートがたくさんいて、3万人以上自殺者
がいて、殺し合いがいたるところであるようになったわけです。
 90年代の半ば頃まで、日本はあまり犯罪がなく、夜ひとりで外出してもいちばん安全な国だと外国人が
感嘆していたそうです。
 だからこそ、この詩があまりにいい詩に思えるのでしょう。
 こういう幸せより他になにかあるのでしょうか?

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