「言葉、広い夜」キャロル・アン・ダフィ  イギリスの新しい星

言葉、広い夜     キャロル・アン・ダフィ   小泉博一訳
この広い夜と私たちを隔てているこの距離の
向こう側のどこかで
私はいまあなたのことを想っています
いまこの部屋は月からゆっくり逸れています
これは愉しめることです そうでなければ
そんなことはやめにして それは悲しいことです
と言いましょうか? そのような緊張のひとつのなかで
あなたに聞こえない叶わぬ希望の歌を唄う私
ラ ララ ラ 分かりますか?
あなたのもとに辿り着くために 私は眼を閉じて
どうしても超さなければならぬいくつかの暗い丘を想像します
なぜなら 私はあなたに恋しているからなのです
そしてこれはそのようなもの
あるいは言葉にすればそのようなものだからなのです
Words,Wide Night        Carol  Ann Duffy
Somewhore on the other side of this wide  night
and the distance between us,I am thinking  of you
the room is turning slowly away from the moon.
This is pleasurable. Or shall I cross that out  and say
it is sad? In one of the tenses I singing
an impossible song of desire that you cannot hear.
La Lala la. I close my eyes and imagine.
the dark hills I would have to cross
to reach you. For am in love with you 
and this
is what it is like or what it is like in words.
 
<愛>があるから<ことば>があるのか?
 <ことば>があるから<愛>があるのか?
それとも、<愛=ことば>なのか?
などと誰だっていちどは考えてみたことがあるのでしよう。
そして、詩を書いたり、読んだりすることはそうしたことと、とても深い関わりあいがあるのではないでしょうか?
 でも、あまり、そうしたことばかりを考えているとややもすると倫理的になりすぎたり、思想的になりすぎたりして、あげくのはてには、詩が見えなくなってしまうこともあります。
 この詩がとても魅力てきなのは、そういう状態にいながら、あたかも広い海を目の前にしているかのように、<愛と詩>についてかたっているからです。
 それを可能にしているのは、<広い夜>ということばによって生み出される新しい愛のあり方だとおもいます。
 それは、愛の現実や愛の心をしっかりとみつめていながら、しかも、それを所有せすせず自由にしていると思われるからです。

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