バライロガモに

バライロガモに

ワニやトラたちの群れる
ガンジスのほとりに
バライロガモよ
君は ひっそり ひとりずまい
空一面の 夕焼けでも眺めてたのか

今は流行らない
孤独な詩人みたいに
けれど 湿原は拓かれ
君たちの魂は どこかへ去った
風のような鳴き声と
うつくしい球形をした卵と
そこに秘められた
遺伝子のながい夢といっしょに

…そうして
町の市場にならんだ君たちの肉は
どんな味がしたのだろう
バラ色の夢が
飛び去ったあとで

(バライロガモはインドの湿原に、四月の繁殖期以外常に一羽で
 棲んでいた、頭部がバラ色の静かな美しい鳥。湿原が開墾され、
 今世紀前半に絶滅した。)

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