オーロックスの頁
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この地上が 深い森に覆われ
その中を オーロックスの群れが
移動する丘のように 駆けていたころ
世界はやっと 神話の始まりだったのかしら
貴族たちが 巨大なその角のジョッキに
夜ごと 泡立つ酒を満たし
ハンターたちが 密猟を楽しんでいたころ
世界はまだ 神話のつづきだったのかしら
やがて 森は失せ
あの不敵な野牛たちは滅び去った
うつろな盃と 苦い酔いを遺して
破りとられた オーロックスの長いページよ
世界は それ以来 落丁のまま…だ
(オーロックスは長い角をもつ、大きな野牛。飼い牛の祖先。
ユニコーン伝説のもとになり、旧約聖書にも登場する。
角はジョッキとして珍重され、その肉は食べられた。
1627年に最後の1頭が死んだ。)