届かぬ声(3)

斉藤 梢さんは72首の短歌につづいて、短いエッセイを載せて
おられます。その一部をも引用させていただきます。
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(震災後のテレビにうつる人たちの「がんばります」の声に、私はとても
切ない思いがした。言葉を選べないのだ。その苦しみ悲しみ痛み嘆き
を、表現する言葉が見つからない。)
(チェコの友人からメールが届いた。……東北人の精神の強さ、避難所
での食料の配布に並ぶ無言の正しい列に、日本人の心を知るという報道。
宮沢賢治ならばどうしただろうか、と私は津波ののちの泥の田圃を見なが
ら思う。……「ヒデリノトキハナミダヲナガシ サムサノナツハオロオロアル
キ」と賢治の心に私はいま寄り添う。自然の摂理と闘いつつも、粘り強く
暮らしてきた人たちだからこそ、強くなれるのだろうか。)
(短歌には心や思いを伝える役割がある。思いを残すだけでなく、相手に
伝えたいと願うときに定型が言葉を受け止めてくれるはずだ。一行の歌が
心からの一言となればいいと思う。人間の心情のとても細やかなところ
までを言葉にする方法を知っていて、詠むということができる者がこれ
から担うことは何か。それは、短歌で何ができるかということとは違う。
芸術論や評価の対象にはならなくても、すぐれた作品かどうかというこ
とでもなく、とにかく心に依って詠みたいと思う。東北人として、宮城県人
として、私たちの暮らしているすぐそこで起きた災いだからこそ、被災地
の現実を被災者の本心を、言葉で残していかなければならない。涙の
かわりに。)
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以上斉藤 梢さんの震災地からの発信、「届かぬ声」の一部を転載させていた
だきました。
あらためて 「斉藤 梢さん、ありがとう!」

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