命日

 今日は7月3日。前田千代子さんの亡くなられた日です。三年前の今日はすぐそこにある。その2週間前に富山の病床を見舞い、交わした会話。その翌日金沢のホテルからかけた電話での「私は水野さんに励まされて詩を書いてきただけ…」という彼女の静かな口調を思う。そんなことではなかっただろうに。 もっともっと生前に彼女に会って話をきいておきたかった…という無限の思いばかりくりかえしよみがえる。
 その旅から帰ってきて、私はすぐ体調を崩し、10日ばかり入院してしまった。6月30日に退院して翌日、手紙をすぐ書いて投函したが彼女には読んでもらえなかったと思う。手紙は彼女のとこに7月2日に着いているにしても、彼女は同日の朝には倒れ、意識のないままに3日に亡くなったのだから。だから私の最後の手紙は今も彼女のあとを追いかけているだろう。空のどこかを。
3年前の日記を読むと、欄外に小さく、「閉じし翅 しずかにひらき 蝶死にき」 (梵) と書かれている。

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