*交通機関について。
不通になっていた秋田新幹線はやっと再開されたが、鉄道の混乱は続き、家屋の倒壊や死者も多くなり、雪国の生活の大変さが思いやられる。その雪国から何事もなく帰ってこられたことは、感謝しなければならないだろう。
だがT温泉の宿の主人が「私たちは雪の専門家ですから・・」と言っていたように、平常どおりであれば何も騒ぐことなく、都会生活者よりもずっと豊かな雪国の暮らしを味わっていたはずである。ただ今年は余りにも異常なのだ。
上越新幹線がまだ不通になっていないのは、きっと、高崎を出ると上毛高原、越後湯沢、浦佐と停車する地点だけ姿を出すだけで、長岡に至るまでの豪雪の山岳地帯の大部分がトンネルになっているからであろう。列島を横断する同じような秋田新幹線の方は、盛岡を出てからのトンネルは地図で見ると一箇所しかない。後は平地を走っている。
今はT温泉には浦佐から車で40分ほどだが、昔は小出からバス、30分ぐらいで辿りついていた。
小出は、只見線との分岐点である。ここに新幹線が止まるべきだと素人は考えるが、そうではなく新しい駅ができた。駅前には元首相の銅像が立っている。
1983年(昭和58)の初回の時は、急行に乗って行った。その後、新幹線が開業しても、急行の方に固執した。もちろん安いということもあったが、新幹線に乗りたくなかったからである。トンネルが多いことが分っていたし、第一小出に停まらないからである。
しかしだんだん急行の本数が減り、最後は無くなってしまった。そこでやむを得ず新幹線で浦佐に行き、在来線に乗り換えて小出に出た。そこからバスに乗る。
ところが浦佐から小出への連絡も時間によっては40分も待たなくてはならないことがあり、バスの連絡もうまく行かないこともあったが、それなりに小出の町をぶらぶらしたりして時間をつぶした。時にはバスを一台やり過ごして買い物を愉しんだりした。持込みのための(または土産の)酒を買ったり、こちらでは手に入らない雪国ならではの長靴を買ったりもしたのだった。(この長靴はずっと毎年持参して今でも役に立っている)
そのうち今度はバスも当てにできなくなってきた。そして今では浦佐から旅館の送迎の車に頼っている。
新幹線だけの旅になってからも、帰りは湯沢まで在来線で行って乗り換えるコースを考えた。これだとそこまでの沿線の雪景色や土地の人も乗っている車内の雰囲気も味わえると思ったからである(実はこの分、新幹線の料金が節約でき、お昼の弁当代ぐらいが浮くのである)。
ところが去年、その日突然在来線の時刻変更で、乗り換え時間に間に合わなくなり、幸いというかやってきた新幹線に一区間乗れば間に合うといわれ、急遽新幹線で乗り継ぐという技をやらせられて(JRが私の魂胆を見抜いて意地悪をしたのではないかと思えたほど)、懲りたので今年からは往復とも浦佐まで新幹線ということにしたのだった。
急行を利用していた初めの頃、上野を9時半ごろ出て、旅館には午後遅く着いた。
今は自宅で昼食を済ませてから出かけ、旅館には同じ頃着く。帰りも11時ごろ宿を出て、我が家に帰り着いたのは午後3時すぎである。なんと楽になったことだろう。自宅から旅館まで、すいすいと寒さもほとんど感じることなく運ばれていく。(ただ新幹線の指定を取ることだけ苦労するが)
だが便利で楽になっただけ、何かが失われていくのを感じる。
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