先の土曜日、はからずも西洋音楽の粋であるバロック音楽と東洋の旋律であるシタールの演奏を聴くことになった。
バロック音楽は月に一回、講師の解説を聞いた後、DVDやCDで音楽を聴いているが、今は時代としてもちょうど佳境に入ってバッハである。
そして今日はバッハの《ブランデンブルグ協奏曲》とカンタータ第147《心と行いと生活が》を聴いた。
前者は、私も知っているような有名な曲だが、それはほんのさわりの部分であって、それを1番から6番まで聴くことが出来、しかもこの音楽鑑賞と研究に生涯をかけた講師である先生の解説つきであるから、私などにはちょっと勿体ない位である。DVDの演奏も本場の城館での録音で、演奏者、年季の入った楽器、古楽器、会場のみならずその外観まで映し出されているから楽しい。
バッハのカンタータは沢山あるが、この曲は旋律が美しく、後期の「魂のドラマ」としての迫力や深みに欠けているかもしれないが、抒情的な美しさがあってカンタータへの入門曲として素晴らしいといわれる。
《ブランデンブルグ》も、6つの協奏曲集であるから、それぞれに弦楽器、管楽器の編成も違い、曲調も違い、一曲として同じような曲を書きたくないというバッハの芸術家気質が強烈に見られる曲集だというが、解説されて聴いてみると、なるほどと感心させられる。
この講座が終ってから、これも偶然にこの日に重なったのだが、「インド音楽 シタールの旋律」という講座が始まるのである。この講師は堀之内幸二先生。このブログで、ベトナム旅行の際に書いたのだが、ヨーガの先生堀之内博子先生の夫君で(その際、企画から下見や準備などを周到にしてくださり、大変お世話になった)、シタール奏者なのである。
という事情で、今度はインド、東洋の音楽を聴く事になった。最初に少しだけレクチャーがあった。インド音楽の音階について。また曲をラーガというが、西洋音楽の「曲」とは違い旋律のパターンだというのは、〜長調,〜短調というのに似ているようですが、今日は時間帯の法則に則った「夕暮前のラーガ」、「夕暮のラーガ」、「夜のラーガ」を演奏するという。それをここで説明するのは至難の業で(私自身がよく分っていない)、またシタールについても説明があったが、これもネットで探索すればすぐ分る事なので省略するが、胴というか共鳴部はトウガンの実をくりぬいて作ったもので、割れやすいが修理も利くので人間よりも長生きしますとのこと。
次に伴奏に使われる打楽器のタブラ(大小の壷状の上面に皮を張った太鼓)、とその演奏者が紹介される(演奏者=龍聡)。その楽器の説明も少し。
いよいよ演奏となったが、西洋音楽との違いをしみじみと感じた。風の音や木の葉のそよぎ、せせらぎや波音、星の輝きや月の運行、そのような外気に対して心が解けて行くような感じがするからである。バッハも素晴らしかったが、それは心が引き絞られゴチック建築のように天にそそり立つような清らかな美しさで、それとは又違って、単調だといえば単調なパターンのくりかえし、それでもよく聴けば決して同じではない微妙な違いでもって奏され、それが次第に心を解放し、深いところへ導かれる感じがする。音楽を聴くというより自然の中に放りだされるよう感もする。しかも時々唸りに似た音色がまじるのも快く、西洋の明晰さとのちがいが感じられるのである。
それにイ短調とかヘ長調というのではなく、夕暮のラーガとか真昼のラーガとか、自然の運行が使われるのも東洋的、インド的だと思うし、やはり東洋人である私は、一方では西洋音楽のすばらしさに感嘆しながらも、やはりシタールの音色には全身が抱きこまれる感じで、身近な気もするのだった。
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