昨日、近くにある芸術館の小ホールに落語「柳家小三治独演会」を聞きに行った。舞台だけを見ているとちょっとした寄席気分が味わえる。寄席などは構えて遠くまで出かけるものではないような気がする。小三治さんも、何の役にも立たないことに、無駄に時間を過ごしにやってくるようなもの・・・、しかし会場でメモを取る人も最近はいて・・・、と言って笑っていたが。このホール寄席に、私も時々ふらりと行くようになった。
前座は柳家三三の「お菊皿」で、小三治は「付き馬」と仲入りの後「一眼国」。
古典落語だが、語りに入るまでの枕の部分に今の世情の機微なり政治や社会への風刺のようなものが織り込まれることが多い。最初の枕は、古いカメラのことから最近の事件ATMに取り付けられた盗聴カメラのことになって、それが文明批判じみたものになっていき、次のには一昨日中国から帰ったばかり(小沢昭一、永六輔らと)と言い、ちょうど小泉首相の靖国神社参拝の日であったことからそれに影響されたことや国民性の違いなどの話を面白おかしく・・。
小三治の落語を聴いていると間のうまさを感じる。息もつかさず面白いことを言ういう人もいるが、全体に語り口はゆったりして、それでいてふいについて出る話に思わず笑ってしまう。つい枕が長くなって・・・と言う。枕だけでなく中途にも枕が入って・・・と言ったが、確かに時々横道にそれて、本題は何だったかな、ととぼける。それもまた面白い。
落語はまさに言葉の芸、話芸であるが、それに加えて「間の芸」でもあると思う。そこに人柄がにじみ出る。それは文体に似ている。同じような内容を語り、描いても、その語り口によって面白くもあり、快くもなる。詩もそうなのだろうなあ・・・。
行く時は小雨が降っていたが帰りは上がっていて、夕焼け雲が西空に広がっていた。そして今日は気持ちのいい秋空になった。
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