今日は、アメリカの9・11同時多発テロ5周年。しかし昨日わたしは、それとは別の9・11を思う会に出席した。ラテンアメリカのチリにおける「9・11」事件である。これまで私はこれについて全く無知であった。多分日本人の多くが同じようなものなのではないだろうかと思う。
チリの詩人ビオレッタ・パラの『人生よ、ありがとう』の翻訳者である水野さんが朗読をするというので、参加したのである。プログラムはそのほか、「世界は、たくさんの『9・11』に満ちている」(太田昌国)、「チリへの思い」(画家、富山妙子)、9・11事件(軍事クーデター)の首謀者「ピノチェット将軍」を描いた著書の翻訳者(宮下嶺夫)の話などがあり、富山さんの絵が並び、パラをはじめとする歌が流れ、チリのワインや手作りのつまみまで振舞われる、楽しくも充実した、だが刺激的で深く考えさせられる会であった。
確かにアメリカでのテロは許しがたい、悲劇的な大事件である。しかしここでは、その悲劇を自分たちだけが蒙った特別な独占物とするな、という。それを争いや憎しみを克服する原点としてこれまでの事を考え直そうと言うのであればいいが(もちろんそういうことは市民レヴェルではやられている)、それを口実にテロへの戦いと称して、武力で世界へ自らの優位だけを誇示していこうとする国家の姿勢が変わらなければ、テロは決して収まらないだろうからだ。
チリの1973年9月11日は、南米チリで軍事クーデターが起こった日という。これは社会主義政権(稚拙で不満も多い政治であったにせよ植民地から開放された民衆によって作られた)が、軍部によって倒され、その後、凶暴な軍政によって民衆は苦しむ。その背後にはアメリカがいた。同じ構造が、植民地時代の宗主国が引き上げた後のラテンアメリカでは起こっているのである。これを聞きながら、私はベトナムでも同じだったではないかと思った。それはアフガニスタン、イラクにも通じる。
大々的に報じられるマスコミの、大きなニュース、そして次々に現われては直ぐ消えていく現象のみに振り回されずに、その裏にあるものや地味であっても大切な事柄をしっかり見ていく事が必要だなあと思った。
80歳という富山さんの情熱的で意志的な、姿勢正しい美しさに圧倒されながら、日本は今堕落している、自分は今その堕落を噛みしめていると言う言葉に、つくづくわたしもそれを噛みしめねば・・・と思ったのだった。思うだけなら易しいけれど・・・・・
帰りの夜空に中秋の名月をやや過ぎた月が、くっきりと眺められた。
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