音楽劇『銀河鉄道幻想』(作・のまさとる 原作(宮沢賢治の作品など)

昨夜来の雨が上がった「体育の日」の夕べ、星空を眺めながら野外劇を楽しんだ。
以前にもブログで紹介したが、近くの高校生による演劇である。これまで何度も県大会や関東地区の大会に優勝、全国大会で2位を取った伝統のある演劇部である。
今回は、賢治の作品「銀河鉄道」に、賢治の子供時代や家族関係、その暮らしぶりや人生思想を重ね合わせながら、音楽あり踊りありのオリジナル作品で、樹木に囲まれた丘の上で虫の音を聞きつつ星空を見上げながらの舞台(演出から舞台装置、大道具・小道具、衣装やメイク、音響や照明などすべて手作り)は、若者たちの熱気と鍛錬された演技は素晴らしかった。
特に今回は、舞台の両脇に小さな回り舞台までが作られているのには感心した。それが賢治の家の中になったり、妹のトシのベッドになったり、銀河鉄道の車内になったり、賢治が農民たちに教える教室になったりして、場面をスピーディに展開させるのに効果的だった。
小道具や衣装もあの当時のしつらえで、着こなしもなかなか、着物姿で飛んだり跳ねたりも様になっていた。賢治は音楽好きだったがチェロを初めとした合奏も舞台上での生演奏もあって、楽しい音楽劇ともなっていた。
作家となった賢治が舞台裾に出てきて筋の展開を語るという形式で進んでいく。また、「どつどどう どどう…」の音楽と共に現れる風の又三郎や、最初と最後に賢治の家族写真を出演者で演じさせるという枠組みがあり、子供時代の賢治やその後の活動、トシの死を絡めながら、ストーリーとしては「銀河鉄道」に沿っていく。ジョバンニに賢治を投影させながら、カンパネルラをはじめとして、車掌や鳥捕りや燈台守、死神やカラスや、また火に体を燃やすサソリなど…、衣装も役作りもよく出来ていて楽しめた。そしてそのストーリーの中で、風土も気象も厳しく、そこでの貧しい農民の生活、それをどのようにしたら皆が幸せになれるかと自問し行動していく賢治の生涯を描いていく。脚本もしっかりしていたし、演技も大勢であるにもかかわらず、皆きりっとした動きと振り、しかもエネルギッシュで、若者の意気と努力を頼もしく思い、劇のクライマックスは感動させられた。これは今日でも、いや今日であるからこそ伝わってくる賢治のメッセージがあるからかもしれない。
劇の終り頃、斜め前にふっと落ちてくる小さな光があった。ホタル? と思ったが、もうその季節ではない。何だったのだろうか? 私の目の錯覚か? 分からないでいる。

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