蛍の宴。
いつものように6時半集合。いったん家に帰り、また夕方出かけていく。出かける少し前に雨がザーと降ったけれど、すぐ止んでそのまま解散時まで曇り空であった。
今回は参加者が多く、子ども2人を入れて25人。入山(?)の準備(蚊よけや長靴に履き替え)をしたり、Kさんから注意を聞いたりしながら暗くなるのを待って7時から歩き出す。
入る前に「入らせてもらいます」と必ず手を合わせて拝むのが仕来りである。人数もちゃんと確かめておく。一人足りなかったり、増えたりしたら恐いからである。ここは市内でも恐い谷戸であるという。「気を引き締めて、十分注意して歩いてください」とKさん。「甘く見て油断しないでください」とも。実際ここでは死者も出ていて、また怪談話もあるという。
怪談1、真昼間である。ある人が歩いていたら、後から肩をポンと叩かれ「よお」と声を掛けられたので振り向いてみると、後には誰もいなかったそうである。確かに肩に手ごたえを感じ、声も聞こえたのだという。
怪談2、これはKさん自身の経験である。いつものことであるが、一人でこの谷戸を歩いていたら、向こうからグループらしい人たちの話し声が聞こえてきて、だんだん近づいてくるようだった。しかしどこまで行ってもそんなグループは見当たらなかったという。
しかしこういう谷戸であるから蛍も出る。ホタルにとって快適な生息地は、水は綺麗でなければならないが、一見してじめじめして汚らしい、陰気な場所である。コケの生えた枯れ木や倒木が川の中に浮かんでいたり、枯葉が溜まっていたりする水辺である。それを公園のように快適に小奇麗に、人間の眼に美しく整備してしまってはダメなのである。そういう陰の場所も残しておかねばならないので、Kさんたちはここが残され市に移管されたと言っても目を光らせているのである。(それで明日は、今度担当が替わった市の職員の人たちを案内してのホタル観察を行うとのこと)
さて、私たちはKさんを先頭にして一列になって谷戸に入っていった。ホトトギスが鳴いている。「なるべく懐中電灯は使わないで」と言われる。「だんだん眼が暗さに慣れてきますから」夏草は道を覆うくらい伸びている。また所々測量跡の杭が飛び出ているし、太い木の根も浮き出している。中に行くほどどろどろ、ぐちゃぐちゃの道になる。先頭からそれらを伝える指示を後に伝えながら前の人に遅れないようにして歩いていく。だんだん「トラの眼になります」と。
私たちは明るさに慣れていて、全くの暗闇などほとんど経験しない。それに慣れる体験も時にはいいことだと。それに慣れるとだんだん暗くても物が見えてくるものです。そうすると夜行性のトラの眼のようになるのだと。
この時間、空を見るとコウモリが餌を求めてやってくるのが見えますといわれ、立ちどまって空を見上げていると、確かにヒラヒラと黒い蝶のような影が空を横切っていく。
これらのコウモリは、だいたい大船駅前の商店街に住んでいて(中華屋の軒、換気扇の中など)、夕方になるとここに餌を求めてくるというのだ。初めて知りました。
谷戸の突き当りまでとにかく進んで7時半ごろ、そこからゆっくりとUターンしながらホタルの出現を待つのです。誰が一番先に声を上げるか・・・。ちょうど、一番星見いーつけた!という感じです。そしてその一つの光が見えてくると次々にホタルたちはあちこちに光りだします。舞い上がり、ふわふわと飛び立ち移動しながら、こちらにやってくるものもいます。少しずつ移動しながら高い木々の間を、また湿地帯と潅木の間などのホタルの雄たちの乱舞を声を上げながら眺めやります。この時期、そしてこのあたりはは皆源氏ボタルです。この間ほぼ3~40分。まさに宴です。
足元の草むらに、地面に近いところにも光るものが見られました。それは多分、これから出る平家ホタルのサナギでしょう、とのこと。その光るものを手にとって見ると確かにサナギのようです。これでは踏まれてしまうと避難させます。
平家はまだ時期が早いのですが、下流の池の方に見られるかもしれないと移動しましたがまだのようでした。今年は全体的に遅れているようで、平家は7月に入ってからだとのこと。もう一回観察会をやりましょうと。
実は今年は少し少なかったのです。ちゃんとホタルは飛び満足はしましたが、やはり昨年と比べて少ない感じでした。何日か前に様子を見に行ったMさんの話ではその時は今日の倍ぐらいはいたとのこと。今日は50頭(ホタルはこう数える)ぐらいだそうです。本当なら200ぐらいはいるはずなのです。理由は前前日から降り続いた雨のせい。これで死んだものも多くまた、今日は少し風もあったせい。タイミングも難しいようですが、でもこの季節この時間、毎年ちゃんとホタルが舞うという自然の営みの不思議、律儀さを思わずにはいられません。そして今年もそれが見られたことに感謝しながら、皆無事であることを確かめ合ったあと9時近く解散となりました。
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